お知らせ
20階になりました。
皆様のご来場をお待ちしております。
第20回記念未来コンサート
2017年4月29日(土・祝)
14時開演
於:弘前文化会館(0172-33ー6571)
第1部、第3部
西沢澄博 オーボエリサイタル
第2部
第15回弘前桜の園作曲コンクール表彰式と1位作品演奏
ゲスト出演 西沢澄博
1979年, 青森県弘前市出身。弘前市立第五中学校の吹奏楽部でオーボエをはじめる。
1998年、東京音楽大学へ入学。
2000年、京都国際音楽学生フェスティバルに参加。室内楽とオーケストラの公演に参加した。
2002年、東京文化会館新進音楽家デビューオーディションに合格(ソロ・室内楽の2部門)。
東京文化会館大ホールで行われた合格者によるガラ・コンサートに出演。
2002年、東京音楽大学卒業。卒業直前に受けたオーディションに合格し卒業と同時に
仙台フィルハーモニー管弦楽団に入団。
小澤征爾氏とチェロのロストロポーヴィチ氏が行った「キャラバン2002」のメンバーに
選ばれ東北各地で演奏を行った。
オーケストラ以外にソロや室内楽活動も盛んに行い「仙台クラシックフェスティバル2008」ではオーボエのソロコンサートを、2012年には仙台フィルの262回定期演奏会においてR.シュトラウスのオーボエ協奏曲のソリストとして登場した。また仙台フィルが劇中の音楽を担当した映画「剱岳・点の記」では独奏曲を担当した。
これまでにオーボエを宮本文昭、安原理喜の両氏に師事。また、アフィニス夏の音楽祭においてV.シュトルツェンベルガー、K.クリユスの各氏の指導を受ける。
現在、仙台フィルハーモニー管弦楽団首席オーボエ奏者。また、仙台ジュニアオーケストラ講師、宮城学院女子大学音楽科非常勤講師も務める。
演奏曲目
・オーボエソナタ ニ長調 作品166・・・サン=サーンス作曲
・ソナタ ヘ長調 K370・・・モーツァルト作曲(原曲 オーボエ四重奏曲)
他
ピアニスト 藤井 朋美
宮城県石巻市出身。山形大学教育学部音楽科卒業後、
2007年より、フランクフルト音楽大学にてキャサリン・ヴィッカーズ氏に師事。
2009年、フランクフルトに てドイツ学術交流会(DAAD)コンクール第二位受賞。
2010年、同大学を優秀な成績で卒業、大学院ソリスト科に進学。
2011年、フランクフルト音楽大学より特に優秀な外国人学生1名を対象とした
DAAD賞を授与される。
2013年3月、大学院修了と同時に国家演奏家資格を取得し帰国。
第49回全東北ピアノコンクール第一位及び文部科学大臣奨励賞受賞。
第21回JPTAピアノオーディション本選入賞、入賞者演奏会に出演。
ユーディ・メニューイン財団「Live Music Now」、Frankfurter BachKonzerte 奨学生 。
現代音楽フェスティバル「Piano+」(ドイツ・カールスルーエ)、「Vor Echo」(ドイツ・フライブルク)に出演。ヘッセン放送(HR)より演奏が放送される。ドイツ各地のほか、スイス、ポーランドの各国でも演奏。
草津国際音楽アカデミー、クールシュベール国際音楽アカデミー(フランス)、ローザンヌ国際室内楽アカデミー(スイス)、ハイリゲンベルク城国際室内楽アカ デミー(ドイツ)にてアントニー・シピリ、ピエール・アモイヤル、ブルーノ・カニーノ、小林秀子の各氏に指導を受ける。またフランクフルトにて、ベルント・グレムザー、マルコム・ビルソン、フェレンツ・ラドシュ各氏のマスタークラスを受講。
これまでにピアノを故・菊池有恒、小笠原浩子、中川賢一、伊達華子の各氏に師事。ピアノ独奏に加え、デュオ、ピアノトリオ等アンサンブルでの演奏活動も活発に行っている。
ピアノテック仙台講師、石巻市にてピアノ教室を主宰。
序破急計画
1
曲立彦は、先ほど主任研究員が持ってきた、
”エルニーニョに関するデータ分析と推計の報告書4”の
最終校正に目を通し終え、
ひとつ大きく背伸びをして、新しい自分の部屋を見回した。
相対する2面の壁一杯の書棚をはさんで、
広くS字にカーブしたデスクが置かれ、
その右側には、
全国にネットワークを持つ、
スーパーコンピュータに連動する端末器をはじめ、
テレタイプやファクシミリなど、種々の機器が設置されている。
デスクの後方は全体がガラス張りで、
その向こうはるか下では、
明るい太平洋が波を打ち寄せて、
眼下の岩に音のない白いしぶきをあげていた。
昨年開設されたばかりの、六星グループ海洋気象研究所である。
曲は机の右側の小引き出しを開けてその中に小声で何か言うと、
S字デスクの左延長上にある、形状記憶ソファーに座り込んだ。
「お呼びですか」
隣の研究室から出てきた主任研究員が頭を下げた。
「この報告書を所長にまわして・・・
それからコーヒーを頼むと言ってくれたまえ」
「わかりました」
主任研究員は、
机に置かれた200ページは超すであろう冊子を取りあげ、
足早に出て行く。
曲は火のついていない大型のマドロスパイプをくわえ、
ゆっくりと足を組む。
こけた頬と縮れた髪の小柄な彼には、パイプが重たげに見えた。
海底火山の噴火から一人だけ逃れた彼は、
それを機に潔く大学を辞した。
自分の人生について、
じっくりと腰を据えて考えてみようとしていた矢先に、
六星グループからの誘いがあった。
あの噴火から幸運にも命拾いした彼にとって、
これもまた何かの縁であろうかと、
特に条件も訊かずに承諾してみると、
研究所は伊豆の海の見える、すばらしい環境に建っていた。
フレックスタイム、最先端の設備と優れた部下、報酬も倍増していた。
そのうえ、所長の話によると、
必要とあれば、研究費はいくらでもだすという。
そして今、曲立彦はここにいる。
2
「お待たせ致しました」
ラボ助手の女性が、ブルーマウンテンの香りと共に現れた。
「ああ、そこに置いてくれたまえ」
ストレートの時はブラックで飲むのを知っている助手は
「ハイ」と答えてテーブルにセットを置き、一礼して去っていく。
彼は左手でパイプをとり、右手でカップを持ち上げる。
数ヶ月前までの学内生活が夢のように遠くにあった。
(今頃、田丸は何をしているだろう)
曲と教授を争った男の名である。
ここは別世界のように明るく、清潔で居心地がよい。
曲はカップを口に運び、香りを楽しみながら、徐に飲み始める。
「それにしても、予想以上だ」
思わず口に出たのは報告書のことであった。
5月にはいってから、ペルー沖の海面水温は6度の上昇のまま、
1ヶ月以上も居座っている。
上昇気流が激しく、中央太平洋では、はなはだしく水位が上がって、
洪水の恐怖にさらされていた。
データの解析が出来た時には、すべてがもう現実のものとなっている。
間に合わないのだ。
(序破急計画3~4へ続く)