NO191

縮小_第20回記念未来コンサート

記念コンサートが、無事成功裡に終わりました。
お運びくださいましたみなさん、ありがとうございました。

ご支援いただいた、弘前市をはじめ、
たくさんの方々に、心から感謝しお礼申し上げます。

詳細は上部「主催イベント」の
未来コンサートと作曲コンクールのところをご覧ください。


序破急計画

教団ビル60階。
ゆったりと立ちこめている紫色の霧が、時々光を増減させ、脈動している。
「X計画進行中。太平洋入水者、各国合計848名」
コンピュータの声が聞こえる。
「日本での入水希望者全員終了」

(予定どうりだな)
どこからともなく思念が伝わってきた。
(一般への影響については、配慮してあるのですか。
内閣調査室が動いているということですが)
(それは、民友党の太田黒を通じて、すべて押さえてあります)
(家族や関係者のほうは?)
(全員にサイココントロールがなされ、
表面にでることのないように、十分に手は打ってあります)

 彼らはいったい何者なのだろう。
 その影さえも見えない。
 思念が飛ぶ時だけ、紫色の霧が脈動する。

「あの男、秋山とか言ったわね。だいぶやるって話じゃないの」
女が初めて声を出した。
同時にそのあたりの霧が後退し、
身体に2,3枚の布きれしかつけていない女の姿が現れる。
濃厚な色気が発散されると、
一度後退した霧が集まってきて、彼女の身体に触れ光を明滅させる。

「ウム。最初の赤(レッド)クラスで失敗したものの、
その後の発達はめざましいものがある。
この短期間に緑(グリーン)クラスまで上がるとは異例のスピードぶりだ」
「3月下旬にX計画に参加させて潮岬にやりましたが、
最初にしては上出来でしょう」
「かなりの潜在力があると聞いていましたが、
さすが、お目が高いですね。得意とするものは何ですか」
「まだ十分とは言えませんが、集団催眠に優れたものをもっています」

みんなが肉声で話し始めると、霧が後退し、
やがて4人は一カ所に集まってきた。

「で、例の彼女とはどうなんだ?」
「それが、結婚したんです」
「ほう。なにもこの時期に結婚しなくてもいいだろうに・・・」
「緑(グリーン)クラスともなれば、
今後のことが、うすうす見えていたはずだよねぇ」
「恋は盲目というからなぁ」
「その言葉は、いつか聞いたことがありましたね」

(ところで、人材発掘のほうは、どうなっているのか、データをだしてくれ)
NO1が無言で指示した。
「X計画進行中。有能な人材19名発見、13名獲得」
コンピュータが答える。
(フム、まあまあか)
(緑(グリーン)クラス以上に上がれるような人材は、
そんなにたくさんいるわけがありません)
(秋山が第1号ってわけね)
(いや、彼はその前に私が偶然見つけたんだ。
彼なら青(ブルー)クラスもクリアーするだろう)

 どうやら教団のX計画は2段階になっているらしい。
 第1が集団自殺、第2が若年層を中心とした誘拐だ。
 それは、彼らにとって必要な人材の芽を集めるのが目的である。
 単に能力があるということだけではなく、
 彼らと血を同じくするものを探しているのだ。
 彼ら同士には、おのずから同族であることがわかり、
 自分たちの故郷へ行くために、進んで集まってくるのだ。

(みんな故郷を求めているのです)
(光と水の国だわ)
(理想の世界です)
(祖国”ムー”の復活だ)
4人の思念が同時に発せられ、一点で渦巻いた。

(そのために、団結しなければならないのだ)
「白のおかた!」
4人がさっと緊張する。
紫色の霧が四散し、純白の寛衣の男が現れる。
床の一部がせり上がって男がそれの腰を下ろすと、
4人はその周りを取り囲むように坐る。

「X計画は順調に進行しております」
一人が報告調に言う。
「分かっている。
われわれは、いよいよ次の計画にとりかからなければならない」
男は、たいして口を開いているようにも見えない。
しかし、部屋全体に声がエコーする。
「多少のトラブルはありましたが、準備は完了しております」
「海底火山の噴火を、もう少し押さえられないのかしら。
ちょっと目立ちすぎだと思いますけど」
女は先ほどとは打って変わって改まった言い方である。
「あれが限度です。これ以上押さえると、
エネルギーが中央部に集中して計画全体が崩壊してしまうでしょう」
「エルニーニョはどうなのかね」
「あれは自然発生したもので、こちらとは関係ありません。
しかしY計画の準備段階と、相乗効果を示していることは明らかです」

 エルニーニョは別として、
 海底火山の噴火も、彼らの意図するところであるらしい。
 つまり、世界中を混乱させている、ほとんどの現象に、
 彼ら”天の羽衣教団”が関係しているのだ。

「特に問題はないようだな。
それでは、本日からY計画を実施する。
以後極東におけるXYZのコードネームは”序破急の舞”と名付ける。
では、具体的な内容に移ろう・・・」
(・・・・・)
(・・・・・・・)
紫色の霧が勢いを増し。
再び、5人から言葉が失われていった。

(序破急計画8~10へ続く)

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