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第2回東京タワー文化フェスティバル
拙作「時の哀歌」~チューバとマリンバのための~収録中。
今週いっぱい東京タワーテレビで、インターネット発信。

弘前市合唱連盟60周年記念演奏会
11月5日、無事成功裡に終えることができました。
お運びいただいた皆様、ご協力をいただいた皆様に
心から感謝し、お礼申し上げます。
今後また一歩ずつ進んでまいりますので、
ご指導のほど宜しくお願い申し上げます。

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縮小_60周年記事

 

復活

21

槙原恂子と、星野美雪は、
現地から送られてくる情報をまとめるのに忙しい。
他の連中も、編集長の岡田と二人のデスク以外は、全員出払っていた。
「先輩、これでどうでしょうか」
美雪がグラビアのレイアウト案を見せた。
中心に海洋観測衛星”モモ1号”による現地写真が載っている。
青い海原に、はっきりと浅い白い部分が浮き出し、
左右に翅を広げた蝶が、
北西へ向かって飛翔しようとしている姿を彷彿させる。
「すばらしいわ、OKよ。デスクにまわして・・・」

言いながら恂子は、アマランサスの蝶の壁画を思い出していた。
最初にあの壁画を目にした時から、
彼女は蝶の群れに暗示的な強い印象を受けて、
忘れられないものになっていた。
手がペンダントに触れる。
目をつぶると幸福の光が身体を包んでいく。
阿井真舜の姿は現れない。
恂子は、目を閉じたまま、しばらくじっとしている。
心が鎮まってきて、
あの壁画が、
やはり、この隆起部分を象徴的に表現しているのだと分かってきた。
空からは、さんさんと太陽の光が降り注いでいるのだ。
(でもあの黒い扉は何かしら)

22

右手のドアが勢いよく開いて、
大山と小山のヤジキタコンビが飛び込んで来た。
彼らはたった今現地から戻ってきたところである。
「驚きました。予想以上です。
特にフィージー諸島の隆起は、とても信じられません。
地表面は3メートル以上持ち上がり、
近海の浅い部分は海上に姿を現しているんです」
「隆起の速度は」
小山の報告に、デスクの山崎が質問する。
「現地で六星海洋気象研究所の曲部長にインタビューできました。
彼によると、隆起の開始は7月1日の地震の時と推定され、
その速度は3000メートルの海底で、時速40センチ、
1000メートルで、その1/10、
300メートルの浅海では、さらにその1/10の、
0.4センチとなっているそうです」
「で、原因は?」
「トンガ海溝で急速にプレートが沈み込んでいる他は、
はっきりしたことは分からないのですが、
四方から海底が押し上げられて、その分周囲が沈降しているそうです」
「”しんかい6500”で潜ったんだろう」
「ええ、決死の調査だったそうです。
急激な隆起のため、問題水域の海底に長い亀裂が走り、
それに向かって
逆方向から崩れ現象が起こっているのが確認されました。
浮上しつつある部分の周囲がどんどん沈み込み、
それを埋めるように海底が移動しているのです」
「うーむ、で、住民の反応は」
「問題水域を囲む中央、東、南の各太平洋海盆は、特に沈降が激しく、
20メートル以上の水位上昇となり、住民は避難を始めています。
しかしフィージーをはじめ、一般的にはわりと冷静で、
彼らの話によれば、”神の怒り”だとのことでした」
小山の報告が続いている。

23

大山がどうも腹が減ってこまるなどといいながら、
恂子たちのほうへやって来た。
「すごかったぜ、あれこそが自然の芸術ってェやつだな。
あたしゃチャーター機から眺めて感動したよ」
一人で騒いでいる。
「太平洋に大きな蝶が舞いだしたって感じだな、ありゃー」

そうだ、まったく自然の創造した芸術としか言いようがなかった。
恂子たちも、たった今、
”モモ1号”からの映像に目をみはったところである。
現地の上空から見て回った大山たちは、
さぞかし驚いたことであろう。
「えつ、本当、すごいわねー」
美雪が相づちを打った。
(ウフフ・・・)
恂子は心の中で微笑む。
自席で、黙って山崎たちの話を聞いていた岡田が、ゆらりと立ち上がった。

(復活24,25,26へ続く)
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