NO 212

復活

28

11月のある深夜。
黒々と屹立いている教団ビルの頂上から突然火花が散った。
たまたま目撃した者がいたとすれば、
東京中何処にいても分かったであろうほどの、
強烈なスパークであった。
近くには異常はなかったが、
伊豆の別荘地で、窓ガラスが割れる騒ぎがあった。
しかし、それはほんの一瞬のことであり、
ましてや、ロサンゼルス、シドニー、サンチャゴにおいても、
同様のスパークがあったなどとは、
その時点で誰一人知るよしもなかった。

一ヶ月が過ぎた。
その間中央太平洋の隆起は、
最上端が海面下500メートルのところで停止していた。
いまや、衛星写真によるまでもなく、
北西に傾いて飛翔しようとしている、蝶の姿がはっきりと現れ、
不気味な静寂を保っていた。

そしてここ東京。
新宿には雪が降っていた。
かってなかったような大雪である。
ジングルベルが流れるなか、
妙にぼやけたイルミネーションが、白い街に沈んでいた。
(きれいだわ・・・)
槙原恂子は、月刊GOO編集部の窓から外を眺めている。
彼女ばかりではない。
席を外している岡田を除く全員が窓に寄ってきていた。
恂子は大好きな夢道人の詩を思い浮かべる。

 雪が降る、雪が降る
 音もなく降り積もる
 人の世の喜びも悲しみも
 白くつつみ眠らせる
 ・・・・・・・

(雪がすべてを浄化してくれている・・・)
恂子は、世界中で起こっている未曾有の混乱でさえ、
やがて自然が解決してくれるような気がした。
手がペンダントにいき、目をつぶる。
光の雪が降っている。
恂子は心を込めて呼びかける。
雪が生まれている原点が接近し、光が八方に散る。
そこに阿井の姿があった。
(・・・!)
恂子の唇から小さな吐息が漏れた。

編集長の机で、けたたましいベルの音がした。
皆が呪縛を解かれたように動き出す。
受話器を取ったデスクの山崎の耳に、岡田の怒鳴り声が響いた。
「水道橋へ行け!」

29

「”破の舞”進行中、主要部分海面まで500メートル。現在停止中」
紫色の霧の中にコンピュータの声がうつろにこだまする。
(どんな時でも無感動な声ですね)
NO4のすこしざらついた波動が伝わる。
(イライラしても仕方があるまい)
(”羽衣”はまだですか)
時の旅人、NO2、阿井真舜が訊いた。
(4大支部の”白のお方”が探査中です)
(だいぶ人心を惑わしているようじゃないの)
NO3の皮肉な波動が割り込む。
(まあ、そういうな。彼らでさえ、
そうしなければならないほど、困難なことなのだから)

 11月に教団ビルで起こった激しいスパークは、
 この上に住む”白のお方”に原因があるらしい。
 そう、彼が通常の探査波に
 自らの霊波を融合させた瞬間に起こったスパークである。
 そしてその後一ヶ月余、
 太平洋岸の四つのビルの頂上から、放射された融合探査波が
 一点に集中され、
 はるか太平洋の海底、地殻の内部を走査していたのである。
 ”羽衣”を見つけるために・・・・・。

(たしか教団に伝わっている石版の文字が、
一部解読されたところによると、
”羽衣”はムーが沈んだ刻、同時に失われたということでしたね)
(そうだ、それは未だ太平洋の奥底に眠っているはずだ)

 母なるムーの甦るとき
 六つの青き息吹に誘われ
 再び闇より解き放たれん
 そは羽衣
 虚空に舞う

NO1が一部を暗唱した。
それは、彼らの未来を予言しているものとされ、
教典として、敬い親しんできたものであった。
そして今その時が迫っている。
羽衣さえ見つかれば・・・。 

静かに刻が移っていく。

30

「オゥ!」
4人が同時に快哉の声を上げた。
「”羽衣”発見。現在作動位置へ移動中」
コンピュータが無感動に告げる。
中央太平洋、海面下650キロ、20万気圧。
それは、6個の銀白色をした球の集合体であった。
四方から目に見えない力で捉えられ、
徐々にスピードをあげながら、上昇していく。
アセノスフェア、リノスフェア、地殻・・・
やがてその集合体は、
たくさんの空洞をもつ隆起陸塊の中央部に位置して、
いったん停止すると、
6個の球体が解き放され、それずれが水平に分散した。

「”羽衣”予定位置に移動完了」
コンピュータの声に重なるように”白のお方”の思念が伝わる。
(”羽衣”即時作動!)
ビル全体が極超低音のうなりに振動する。
次の瞬間、全東京のイルミネーションが光を失った。
はるか彼方、中央太平洋の隆起陸海の内部では、
6個の白銀球が、12000年の眠りから目覚め、
周囲に青いマイナスの光を放ち始めた。

その時、阿井の超感覚に、
槙原恂子の心からの呼びかけが響いていた。
(アマランサスで逢いたい)
阿井は、決心したように自らの想いを送信した。

復活31~32へ続く。

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