NO 219 New

縮小_発足会
期待の胸が膨らみます。どうぞおいでください。

下記連載もどうぞ。

ムーの幻影
戦い

1月20日にはマレーシア、インドネシア、が、
21日にはタイ、モンゴル、エジプト、アルジェリアが、
22日になって、オーストラリア、スペイン、ポルトガルが、
それぞれ帝国の承認にまわるに至り、
日本もまた、何らかの形で、態度を表明せざるを得なくなった。
各派閥の微妙なバランスによって成立している現政権は、
アメリカの意図に沿い、ネオムー帝国非承認とする方向で閣議に臨んだ。
だが最大勢力である太田黒派の、
離党も辞せずと言う強硬な態度に意見がまとまらず、
結論は先送りとなった。
太田黒派は、この機を待っていたように各派閥に多数派工作をかけ、
同時に国民に対しても、
機会があるごとにネオムー帝国の偉大さを説いた。
世界平和のためには、彼らと同盟を結ぶべきだとアピールし始めたのである。

時を同じくするように、ネオムー帝国アジア大使館では、
独立以来初めての説明会が開かれた。
3階の会議室をびっしりうめた報道陣を前に、
日本におけるスポークスマンと称する、
秋山登が意図的とも思える冷静さで語っていた。

「・・・現在ネオムー帝国は中央政府ビルを建築中でありますが、
それが完成し次第、あらためて国策を打ち出すことになるでありましょう」
具体的にはどんなことかと、待ち構えていた質問がでる。
「詳しい内容はまだ発表する段階ではありませんが、
世界平和のための施策となるでしょう」
「しかし、あなた方は、自分たちの領土を得るために、
多数の生命を奪い、破壊行為で全世界に、
いちじるしい精神的、物質的損害を与えたではありませんか」
「そうだ、そんな連中が世界平和を語るなんて、ナンセンスだ」
「天の羽衣教団は、宗教団体であり、信仰の自由は認めるとしても、
国家として認めることはできないぞ」
「そうだ、そうだ」
一人の記者の発言から、場内は騒然となり、
質問というよりは、罵倒にちかい攻撃が始まった。
「あたしゃ、やっぱり認めないよ」
「認めませんよ」
大川と小山の弥次喜多コンビがヤジる。
もう取材記者を放棄した野次馬の集まりのような雰囲気である。

10

恂子は何故かさめていた。
世界中に160以上も独立国があるというのに、
何故こうなるのかしら。
たしかに大きな被害をだした国々では、
感情的になるのも無理はないが、
そんな中でもすでに独立を承認している国はたくさんある。
太平洋の島々の領有権が、いったい何だというのだ。
世界は今、真剣に取り組まなければならないことが山ほどある。
隣国と争っている余裕などないほど、差し迫っているではないか。
阿井と過ごしたほんの一時の間に、
宇宙的な空間と、10000年に及ぶ時間の中を、浮遊した恂子は、
それを実体験としてもっていた。
あれ以来
自分はなんだか周囲の人たちと遊離し始めているように感じる。

場内の怒号の中、
スポークスマンの秋山登が、右手を弾ませるように机を叩いた。
ポン!
突き抜けるような冴えた音がした。
秋山は立ち上がり、その右手を開いて高く上げた。
「皆さん、親愛なる皆さん。
私たち人間は常に偉大なる神によって導かれてきました。
しかし、いつの間にか、神の恩寵に狎れ、
感謝と祈りを忘れて、度重なる戦争を繰り返してきました」
突然変わった秋山の語調に、
場内は意表を突かれて、彼の開かれた指の先に視線を移している。
殺気立っていた記者たちは、
波が引くように次々と着席して、次第に穏やかな表情に返っていった。

11

(おかしいわ・・・)
恂子は隣の大川を見た。
彼はまるで黒潮と親潮の二杯のラーメンをたいらげた後のような、
満足そうな顔をしている。
小山は秋山の話に顎で深くうなずいて聞いていた。
場内を支配している生暖かい空気が、恂子の周りを避けて通過していく。

「・・・我々は団結しなければなりません。
主義主張を超えて世界の平和を築き上げようではありませんか。
皆さん、親愛なる皆さん!
私どもネオムー帝国は、
心から皆さんの愛とご理解を願っているのであります」
語り終わった秋山は、上げていた手をさっと落とし、再び机を叩いた。
ポン!
冴えた音が突き抜けていく。
報道陣の目に光が戻り、ストロボが次々にたかれた。
「それではこれで、本日の説明会を終わらせていただきます」
大使館の係員が言って、秋山とともに深々と頭を下げた。
取材陣一同も立ち上がって、
ぞろぞろと階段やエレベーターに向かっていく。
「世界平和のためだからなぁ」
誰かの独り言が聞こえた。

(戦い12~14へ続く)

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