NO 226

戦い

27

国連と、ネオムー帝国による攻撃は、この1回ずつに終わり、2日が過ぎた。
中央太平洋からニュージーランドにかけては、一触即発の危機を孕み、
すべての国々が成り行きを見守って緊張していた。
日本は同盟国として「ネオムー帝国を擁護すべきである」という、
太田黒首相の強い姿勢があったものの、
いままでのいきさつから、アメリカとの必要以上の摩擦は、
北方におけるソ連の脅威とも関連して、避けるべきだとする、
党内長老をはじめ、多数の意見が根強く、
国家としての態度を一時留保していた。

帝国のアジア総大使館は、そんな政府の対応を生ぬるいと非難し、
連日のようにビルの周りに集まる群衆に対して、
さらに強く世界平和と人類の幸福をアピールしだした。
帝国擁護を叫ぶデモや集会は、全国各地へ広がり、
大きな集会のある場所には、必ずといってもいいほど、
スポークスマンの秋山が顔を出し、
彼の現れる所は、常に大群衆が押しかけて、
いやがうえにも盛り上がっていた。

月刊GOOの編集部では、
編集長の岡田遥之が国際超常現象会議に出席のため、
ロンドンに出張しているので、デスクの山崎がスタッフを動かしていた。
シドニーへ行った3人の他に、超常現象担当から4人、
スポーツ娯楽担当から回してもらった3人、
それに恂子と美雪をいれた計12人が、
ネオムー帝国関係の取材に奔走していた。
恂子は次々と入って来る情報をもとに、
原稿用紙をうめながら、
あのとき阿井が「行かなければなりません」と言った理由を考えていた。
(この戦いのためなんだわ)
そして、岡田もいない。

28

ロンドン・・・。
それはGOOの本部所在地である。
国際超常現象会議とは、何の目的で、どんな人たちが集まるのだろうか。
それは、表面上はともかく、世界的秘密結社GOOの会議であった。
岡田はその日本代表である。

会議はたった今、重要な決議がなされたばかりであった。
GOOの最高指導者グレート・ロンリー伯爵は、
83歳という高齢にもかかわらず、会議をよくリードし、
世界理想郷宣言の欺瞞性を指摘した後、
この状態を乗り切るためには、
”天の羽衣教団”の上層部との直接交渉が不可欠で、
場合によっては戦いも辞さないと語ったのである。
そして今、GOOの中心的メンーバーが会議の決議のもとに、
世界6ヶ所の帝国総大使館ビルへ向けて出発していった。

同じ頃、三枝由美もまた、
3日まえに岡田に強く握られた乳房の感覚を蘇らせながら、
彼のことを想っていた。

29

「うるさい奴らですね」
紫色の霧の中に映し出されている、
ネオムー帝国の上空を飛ぶ、各国の偵察機を見ながら
ヴァイオレットクラスNO4が言った。
(一つ力を見せてやりましょうよ)
(しかたがあるまいな)
NO1がアジア地区としての結論を下した。
瞬時に彼は、
現在帝国中央政府ビルにいる枢機卿、”白のお方”に、
その旨を送信した。

その60分後。
中央太平洋フィージー海盆に小さな渦米が発生した。
それは18時間後には、中心気圧890ミリバール、
瞬間最大風速80メートルというハリケーンに成長した。
さらに9時間後、ハリケーンはニュージーランド北島を直撃し、
帝国の空爆から立ち直られないでいたオークランドを
一転して水の都に変えた後、
北西から回り込んでタスマン湾を急襲した。
ウエリントンに集結していた英仏の艦隊は、外洋へ非難の途中、
クック海峡で竜巻に巻き込まれ、3艦が航行不能となった。
ハリケーンはあっという間に通過していったが、
ニュージーランドは激甚な被害を受け、
ネオムー帝国との戦線から離脱したのである。

(戦い30~32へ続く)
最初からご覧になる場合は
上部「SF小説ムーの幻影」のボタンをクリックしてください。

カテゴリー: 定期更新   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>