NO 228

戦い

33

GOOによる教団との接触はことごとく失敗に終わり、
グレート・ロンリー伯爵は、
国連側の意識に与えていた最後の歯止めを解いた。

その日のうちに世界六カ所のネオムー帝国大使館は、
国連軍の激烈な攻撃をうけることになった。
しかし、あの大陸隆起の衝撃にさへ耐えた、
強化オリハルコンの外壁は,
強力な電磁バリアーと相互作用して、傷一つつかなかったばかりか、
帝国側のVTOLによる、俊敏な反撃によって、
国連側は損害を増す一方であった。

アジア総大使館も国連機に取り囲まれ、
爆弾やロケット弾の集中攻撃を受けたが、
着弾の前に,
漆黒のビル全体がまばゆい光を放つと、
爆弾はおろか、爆撃機までが、アメのように軟化し、
自ら火を噴いて落下していった。

そして3月30日、
国連はついにネオムー帝国中央政府ビルに対して、
核のの使用を決議し、
帝国に向けて降伏しない場合は、24時間後に核攻撃を行うという、
最終通告を発したのである。

帝国の同盟国は国連を激しく非難し、核攻撃の撤回を迫った。
一方帝国側は、指定の時間になっても、
降伏はおろか、一切の譲歩表明もなく、
「どうぞ、おやりなさい」とでも言うように、沈黙を守っていた。

34

3月31日。
帝国領海線下の海中にいた原潜から、
ついに弾道ミサイル(SLBM)が射出された。
やってみればあっけないほど簡単なことであった。
最後に赤いボタンを押せばいいだけなのである。

だが・・・、
帝国中央政府ビル上空1800メートルで爆発した核弾頭は、
1秒後に1平方センチメートルあたり、1000カロリーの熱を放射し、
直径2300メートルの大火球となって上昇した。
ほとんど同時に、圧力値1平方センチメートルあたり、
1.2キログラムの衝撃波が地上に激突し、
そのすぐ後を追うように、
風速140メートルの爆風が放射状に広がっていった。
やがて、火球は、高度5400メートルでキノコ雲を形成し、
爆心点より5.2キロ以内で、
毎秒130メートルのアフターウインドを内側に吹き込みながら、
4分12秒後には、高度28300メートルに達した。

そして1時間後。
強風火炎によって発生した積乱雲は、
キノコ雲と合体して放射能を帯びた黒い雨が降り始めた。
・・・・。

しかし、
徐々に薄れていく雲間から、あの黒い異様なビルが、
何事もなかったように、変わらぬ姿を現したのである。
固唾を飲んで見守っていた、世界中の人々は、
一言もなく、沈黙していまった。

35

(すごいですね)
紫色の霧の中に映し出された、帝国中央政府ビルの映像を見ながら、
NO4が目を輝かせた。
(それにしても、国連はよく踏み切ったものだな)
(しかし、これで計画はずっとやりやすくなりました)
(バカな奴らね。天に向かって唾するとはこのことだわ)

「爆発規模1メガトン級。半径20キロ圏内壊滅。即死者6万人」

(24時間では、避難が間に合わなかったのです)
(まさか本当にやるとは思わなかった連中も多かっただろう)
(それで、こちらの計画のほうは、どのくらい人間が死ぬことになるの)
(水や食料事情、そしてエネルギーから考えて、
10億は死んでもらいたいところです)
(どうせいらない人間ですものね)
女がいともあっさりと相づちを打った。
コケモモのハーブティーを楽しみながら思念を交わす、
天の羽衣教団ヴァイオレットクラス4人のなかで、
阿井だけが沈黙を守っていた。

「破の舞第3段階開始10時間前」
コンピュータの無機質な声が流れた。

(戦い36~37へ続く) 
上部「SF小説ムーの幻影」のボタンをクリックすると、
最初からご覧いただけます。

カテゴリー: 定期更新   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>