戦い
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ネオムー帝国の6っの総大使館ビル内に進入したGOOのメンバーは、
教団始まって以来のダメージを与えた。
アジア総大使館では、ヴァイオレットクラスNO4を失い、
その時点で彼に精神連動していたブルークラス4人と、
グリーンクラス16人が廃人となった。
古代ムーに翔んでいたNO2の阿井は別として、
急を察知して帰還したNO1の応援がなければ、
NO3の妖艶な姿も、二度と見ることはできなかったであろう。
ネオムー側は自重し、ガードを固めた。
そして、
10億人の人口減を目指す帝国の”破の舞”は、
いよいよその最終段階に突入した。
大量の火山灰によって、どんよりとした空に、太陽光は弱められ、
地球は徐々に気温を下げ始めた。
鉛色の重い雲が、これから冬に向かおうとするかのように、
4月10日を過ぎた東京に雪を降らせた。
ニューヨークは有史以来なかった直下型地震によって壊滅し、
モスクワでは、クレムリンが陥没した。
ロンドンには、高波が襲い、
パリは大竜巻の洗礼をを受けた。
自然現象をコントロールし、
兵器として使用するネオムー帝国の世界蹂躙に、
国連は再び崩壊し、世界は、なすすべもなく1億3000万人を失った。
各地の総大使館ビル前に集まった群衆は、前にも増して熱狂し、
街には「ネオムー、ネオムー」の声が広がっていった。
破の舞は、それだけにとどまらなかった。
4月20日、厚い雲に覆われて、冷却していく地球に
とどめを刺すかのように、
残っていた環太平洋火山帯をはじめとする、
同盟側の山々が一斉に火を噴き上げた。
中でも1980年に北側400メートルを吹き飛ばされた、
アメリカのセントヘレンズは、
今回さらに南側が、大きく山体崩壊し、中央部に低い丘だけが残った。
日本では雌阿寒岳、駒ヶ岳、浅間山、三原山、雲仙、阿蘇山、桜島と、
次々に噴煙をあげ、
ネオムー同盟国として、特に対策を講じることもなく、
楽観視していた太田黒内閣は、
民友党結党以来、最大の危機を迎えたのである。
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フィリピンでは、タールのほか、
ピナツボ、マヨン・ヒポックヒポック、アウ、ソプタンが間を置かず噴火し、
太平洋岸の近海では、大きな地震が発生した。
「データを出してくれ」
アジア総大使館のNO1が言った。
「フィリピン沖、ケープジョンソン海淵と、エムデン海淵で、地震発生。
前者マグニチュード8.0、後者8.5」
コンピュータが答える。
(おかしいな・・・)
No1が首をひねった。
この地震は帝国の破の舞には関係ないものであった。
そして、その日4月22日から、太平洋全域にわたって、
呪文を唱えるような低い音が響きはじめ、日ごとに音量を増していった。
不気味な海鳴りは、4月30日に至って、
世界中のテレビやラジオなどに感応しだした。
発信源はビチアス海淵、海面下11034メートルであった。
<やはり#b”””~が出ますか。Kさん>
空間の深淵に畏怖の念が漂った。
<教団の破の舞は完璧でしたからね>
<何度同じことが繰り返されるのでしょうか>
<それぞれ原因を異にしていますからね>
<最初の時から、もう35億年になります>
<私たちは予言をしても、実際に手を下すことはできませんからね>
空間の深淵に”観察者”Kと
”記録者”Sの穏やかな波動が拡散していった。
(戦いは終了、次章、出発(旅立ち)へ続く)