「昔のことですわ」
チャンネルを変えたら唐突に女の声が聞こえた。
「なにを言っているんだ、あんなに愛し合ったじゃないか」
「今はもうなんとも思っていません」
女:小走りに離れる。
「俺はお前がいないとだめなんだ」
女:追いすがる男に肘鉄をくわせて同じ言葉を繰り返す。
「もう昔のことですわ」
一般的に
男は心の内に、いくつかの部屋をもっていて、
住まわせた女、それぞれに念を残すが、
女は一つの部屋しかないという。
だから
別の男を住まわせるためには
部屋をこわし、新しく建て替えるという。
そういえば
何十年も前の活躍談を、繰り返し語る人がいる。
やはり男に多いようだ。
女は言う。
「昔のことですわ」...と。

