NO 314

縮小_伊具高校FA

月刊弘前、新春随想 

=楽しみの百分率=            
Kミュージックラボ 主宰 川村昇一郎 

 大分前になるが、住友生命が18~28歳まで500人の新社会人に、インターネットでアンケート調査をしたところ、男性は楽しみ38%、不安36%、女性は楽しみ33%不安44%だという。ボクは幼稚園の時から教員志望だったので、楽しみのほうが70%だった。
 最初に赴任したのは宮城県。丸森町の伊具高校・・・当時は仙台からバスで2時間はかかった。ボクは、生活科1年A組の副担任として、教員生活のスタートを切った。ところがしばらくして、担任が病気で長期休暇となった。ボクは急遽担任に・・・女子だけのクラス・・・ボクは22歳。楽しみは80%にあがった。
 音楽部顧問。合唱部は吹奏楽部も加えて大人数の混声で、合同発表会を控えて合宿した。「先生はこっち」と案内された教室には、布団が敷かれ、蚊帳が吊られていた。高級ホテルよりもずっと嬉しくて85%になった。
 教頭は音楽が好きだった。飲み会たけなわとなり、ボクが注ぎに行くと、何時も「椿姫」を語った。やがて、チャチャチャチャン、チャチャチャチャン、チャチャチャチャン、チャンと前奏を口ずさむ。お分かりのアリア「ああそは彼のひとか」だ。時々自宅へも招かれてご馳走になった。新任のせいか、ほんとうによく目をかけてくれて、心にしみ、90%になった
 そんなある日、校長に呼ばれた。校長室に入ると、開口一番「君には散髪する位の給料を出しているはずだがね」ときた。ボクの髪は当時としては長かったらしい。次の日曜日、床屋に行って「料金は払うので、切ったことにして、切らないでください」と言ったら「こっちも商売だからそんなことは出来ません」と言われ、プロの矜持を垣間見た。
 2年目に、今度は数学の教諭が長欠した。ボクは「おまえなら出来る」なんておだてられて数Ⅰを担当した。生徒の成績は、担当者によってかなり変化することを知った。
 
  昨年11月、そんな教え子から電話があった。「先生のコーヒーが飲みたい」と言う。なんとかわいい、七つ違いの女の子・・・だ。前日夜行バスでやって来たという5人は、我が五十石館のコーヒーとアップルパイを楽しみながら、自分たちのこと、町や学校の様子、先生方や、クラスの情報、ボクに叱られたことなど次々と語り、2時間あまりがあっという間に過ぎた。
 その後、彼女達は弘前公園を散策して、すぐにバスで帰るという。「先生に会いに来ただけだから」ワオ!57年の時を経て、忘れかけていた教員生活の楽しみは100%に跳ね上がった。なんだか今年は良いことがありそうだ・・・。

皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます
2024年元旦

 

 

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