NO 202 New

復活

恂子は化粧室に行って、
今はもうすっかり慣れてしまった方法で、阿井に呼びかけた。
何処にいるかも、何をしているかも分からないが、
恂子が強く念じると、額の中心の空間に彼の姿が浮かびあがる。
だが、現れた阿井は、今までにない厳しい顔をしていた。
(やみくもに人の心を探ってはいけない)
強烈な思念を残して、阿井の姿がかき消えた。
すぐに追い求めるが、もうその影さえ浮かんでこない。
額の前にあった光がスーと消滅した。
{阿井さん・・・」
恂子は思わず声に出して目を開いた。
鏡に映った顔が青ざめている。

席に戻って鉛筆を取りあげたが、何を書いているか分からない。
読み返してみると、まったく文章になっていなかった。
丸めてくずかごに捨てる。
全身に深い疲労感が襲ってきた。
頬のあたりの皮がつっぱり、
目をつぶってじっとしていると、部屋の物音が耳についてイライラしてくる。

「先輩どういたんですか。真っ青ですよ」
隣から美雪が心配そうに声をかけた。
「貧血ですか?」
「ほんとうに青いよ。今日は早くく帰ったらどうだい」
向かいの男が立ち上がって言った。
「えぇ・・・そうするわ」
恂子は、だいぶ前、理佳が早退した時のことを思い出していた。

 恂子はベッドの端に腰掛けていた。
アパートの自室である。
縦に長い部屋は、入り口を入るとキッチンとユニットバスがあり、
その奥に、下に引き出しがついた、ベッドがある。
そして一番奥の窓際に机と本棚があり、
上に小型のテレビと電話機がおかれている。
窓から入る光が陰って薄暗くなっていたが、 
恂子は点灯する気も起こらない。
社からどうして帰って来たかさえ、はっきりしなかった。

「阿井さん・・・」
小さな声をもらして、そのままベッドに打つ伏した。
やわらかい髪が、くの字になった腕に降りかかる。
全身の細胞が反逆を起こしたように活動を拒否し、
胃がシクシクと痛んだ。
いつの間にかベッドカバーを握りしめている。
(私はなんてばかなんだろう)

自分は今まで、これといった失敗もなく生きてきたような気がする。
それを当然のように思って甘えてきたのではないか。
今度のように、何か今までとは違った力を与えられると、
自分は普通の人間より、優れているのだと単純に喜び、錯覚していた。
意識するしないは別として、
心の中で、他の人たちを見下していなかったか。
 
 1年ほど前、林理佳と歌舞伎町を歩いていたとき、
 みんなが二人を振り返って見ていた。
 若い二人の幸福そうな姿に、人々は見とれていた。
 しかし、自分が輝いていることが、
 周りの人たちを傷つけることもあるとは、思いもしなかった。
 人より幸福だったり、優れた能力を持った者は、
 それ故にこそ、
 そうでない人たちのために働かなければならないのではないか。

(それなのに、興味本位で人の心をさぐるなんて・・・)
「ごめんなさい・・・」 
恂子は誰にともなくわびて、起き上がった。
ベッドカバーが涙で濡れていた。
電話が鳴る。
星野美雪の声が呼びかけている。
「先輩大丈夫ですか」という言葉に遠い記憶があった。
恂子自身がが理佳にかけた電話の言葉である。
それと同じ、いたわりの気持ちが、
今、美雪から返ってきたのだった。

(復活5~6へ続く)
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NO 201 New

復活

9月中旬を過ぎると、毎日のように起こっているという無感の地震は、
日本ではニュースにならなくなっていたが、
中央太平洋では、相変わらず、微震が続いていた。
今まで洪水騒ぎを起こしていたワシントン島、ファニング島では、
逆に地盤の隆起がはじまって、
9月末日までに全海洋線とも、はぼ1メートル上昇した。
それに歩調を合わせるように、
ポリネシア、メラネシア、ミクロネシアの島々が
軒並み30センチから60センチ隆起し、
特にフィージー諸島では、7月から9月の9ヶ月間に
2メートル13センチという異常な数値を示していた。

関係国はもちろん世界各国でも、
それぞれの立場から必死に対処しようとしていたが、
そのスピードの異常な早さから、データ分析が追いつかず、
ただ口を開けて見守っている観があった。

槙原恂子は、先ほど曲立彦から届いた
「エルニーニョに関する報告書第7」の要旨に目を通していた。
海面水温は例年より8度の上昇になっている。
アラスカでは、氷河が後退し、
あまつさえ南極の氷が緩みだして、一部が割れ、漂流を初めている。
今や、各国はその主義主張を超えて協力し、
真剣に対処していかなければならないと結んでいた。

右手のドアが開いて、スポーツ娯楽担当の連中が、ドヤドヤと入ってきた。
「工藤と森下は順当なところだろう」
「ええ、それに日系3世の王も学生ながら、
たびたびこの方面の紙上を賑わしていますから、分かるとして、
阿部というのは聞いたことがありません」
「青森県出身50歳とあるが、・・・まったくの未知数だ」
相も変わらず大きな声だ。
今日は雀聖戦の準決勝があり、上位4人が決定している。
世界中が動揺し、島々が沈みかねないというのに、
麻雀に命を賭けている人もいる。
7月の地震の時、室内のことはさておき、
取材に行けと怒鳴った山崎のことを思い出す。
人はその立場立場で、
ともかく、当面やらなければならないことを、やっているのだ。
(きっと彼らにとって、麻雀が今やるべきことなんだわ)

ペンダントに手がいく。
最近は、、毎日の練習によって、
10メートルほどの範囲なら、これはと思う人に集中できるようになり、
恂子はちょっと得意になっていた。
今日も近い人から探っていく。
大川の気持ちが一番強い。
大声で腹が減ったと叫んでいるようなものだ。
デスクの山崎を越えて、編集長の岡田遥之の方へ意識を進めていった。
(わからないわ・・・)

今日だけではなかった。
岡田の心だけは、どうしてもつかめない。
ぼんやりとした、
灰色のスクリーンのようなものを感じるばかりである。
(何故かしら・・・)

恂子は目を開いて岡田の方を窺った。
相変わらず机の左側に足を上げ、茫洋とした顔は紫煙にかすんでいる。

(やはり、そうなのかも知れないわ)
岡田はいつも自分たちの先を行っている。
アイスコーヒーが飲みたいと思っていると、岡田から電話がくる。
みんなでモカへ押しかけると、コーヒーが待っている。
それは今、自分が美雪にしていることと同じではないか。
(きっとそうだわ)
岡田には自分と同じ力(パワー)があるにちがいない。
有頂天気味になっていた恂子は、ゾクリと身体をふるわせた。

どうしても岡田の心は読めない。
そうしてみると、岡田はいつもみんなと一緒にいるようで、
どこか遊離しているところがある。
いや、自分からそれを求めているようにさえ見える。
(自分のパワーをコントロールしているんだわ)
恂子は岡田に対して、
前にも増して畏敬の念が沸き上がってくるのを感じる。
とすれば、自分にこの力を与えてくれた阿井真舜も、
岡田と同族ということだろうか。

(復活3~4へ続く) 

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NO 200 New

縮小_現代音楽展
5回目の東京出品です。
時間がありましたら、お運びください。

序破急計画

26

「風早の三保の浦曲をこぐ舟の、浦人騒ぐ波路かな・・・・・」
 朗々とした声が響き渡る。
 最初は眼下に小さく見えていた建物が、
 ゆっくり回転しながら目の前に迫ってくる。
 正面に白州があり、階を通して本舞台が見渡せる。
「われ三保の松原により、浦の景色を眺むるところに、
虚空に花降り音楽きこえ霊香四方に薫ず・・・・・」
 ワキが松の立木にかけてある長絹をとって脇座へ行きかける。
「なうその衣は、こなたのにて候。何しに召され候ぞ」
 シテの天人がワキに呼びかけて登場する。
 増に天冠縫箔腰巻である。

<羽衣ですね>
男の丸みのある波動が伝わって来た。
<あの松は森田さんです>
<なるほど、国立能楽堂ですか>
 
 どのような光源になっているのか、舞台の周りだけが明るく、
 白州の手前をはじめ、一の松から斜め後方や、地裏、
 そして、屋根をふくめて切り取ったような闇に包まれている。
 もちろん本物の国立能楽堂だはない。
 だが、それと寸分違わない迫力と重量感を備えている。
 3次元ホログラフィーである。

「悲しや羽衣なくては飛行の道も絶え、天上に帰らんこともかなふまじ・・・・・」
<羽衣は彼らの手に戻るでしょうか>
<結局そうなるでしょう>
 どうやらこの真っ暗な空間に二人の男がいるらしい。
 どことも知れない所から二つの知性が、穏やかに滲んでいた。

27

 いくばくかの時が流れ、舞台は物着になる。
 シテが後見座で長絹をつけている。
<まあそれが彼らにとって一番幸福なのかもしれませんね。Kさん>
<・・・・・>

「君が代は天の羽衣稀に来て」
「撫づるも尽きぬ巌ぞと・・・・・」
「南無帰命月天子、本地大勢至」
 地謡になり、シテは常座にいって舞い始める。

<さすがですね>
<藤田さんです>
 太鼓入り序の舞である。
<ところで”序の舞”はどうなりました?>
<完了したようですね>

「東遊びの数々に、その名も月の色人は・・・・・」
 地謡が続くなか、シテは舞いながら大正前をまわり、
 招き扇をして正面先へ出てくると、左へ廻って常座につく。

<破の舞いですね>
<そう、現在進行中のようです>
<どうしてもやるんでしょうか>
<序の舞に続くものですからね>
<そうなれば、φが出ますか>
 人間には発音不可能な何かを表現した時、
 一人の穏やかな波動にかすかな脅えが混じっていた。
<それは破の舞の美しさ次第でしょう>
<かなり混乱しますか>
<・・・・・>

「時移りて、天の羽衣浦風にたなびく・・・
天の御空の霞に紛れて、失せにけり」
 シテは扇をかざして小さく廻り、左袖を返して留拍子を踏む。

<”急の舞”もありますか>
<φが出ればそうなるでしょうね>

能楽堂はみるみる縮んで、一点に消える。
二人の波動も徐々に薄れていく。
ただ真に闇の空間だけがひっそりと存在していた。

(序破急計画」終了)
「復活」1,2,3へ続く

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NO 199

序破急計画

24

7月以来太平洋で連続していた、海底火山の噴火が嘘のように鎮まり、
9月の声をきく頃には太平洋岸の陸上火山も鳴りをひそめ始めた。
地震は相変わらず続いていたが、有感のものは、ほとんどなくなっている。
そして、国会でも問題となった、
誘拐や失踪事件はマスコミの話題にのぼらなくなっていた。

槙原恂子は鉛筆を置き、ある意図をもってペンダントにふれた。
目をつぶる。
原稿のまとめに苦労している美雪の気持ちが伝わってきた。
向かいの男の魂胆も分かった。
帰りに美雪を誘おうと思っているのだ。
そのうちに室内の何人もの思いがゴチャゴチャになって飛び込んできた。
恂子は頭が痛くなってペンダントから手をを離すと、
いつものにぎやかな部屋にもどっている。

阿井のことを想った。
再びペンダントに手がいく。
(だから、毎日会っていると同じだといったでしょう・・・)
頭の中で声がこだました。
「あっ」
恂子は思わず声をあげ、あわてて口を押さえた。
反射的に立ち上がって化粧室へ行く。
あらためて阿井のことを強く想い、ペンダントにふれながら目をつぶった。

暗闇の中に光点が生じた。
それはみるみる広がり、全身が光に包まれているように感じた時、
その中心が円形に割れた。
阿井がほほえんでいる。
恂子は感動のあまり、足がふらつき洗面セットに手をついた。
阿井の映像が消える。
目を開くと鏡に映る自分の顔がある。
気のせいか瞳の中心が暗緑色に輝き、
あふれ出した涙が両側の頬をつたわっていた。

25

曲立彦はエルニーニョに関する報告書第6を書き終え、
一つ大きく背伸びした。

9月にはいっても、エルニーニョの影響は衰えをみせず、
世界的に起こっている異常気象は各国の政治経済をはじめとして、
多大な被害をもたらしていた。
なかでも、農、漁業における落ち込みは大きく、
アメリカ、ソ連、中国などの穀倉地帯だけではなく、
ヨーロッパ各国、オーストラリアにおいても、
軒並み30から50%の収穫減となっている。

日本においては、黒潮が潮岬沖に大きな冷水域を残し、
伊豆半島南から太平洋に曲りこんで、
関東地方に暖水塊を残すこともなかった。
それに呼応するように、親潮の下降により、
東北地方に留まらず、関東地方においても、
東よりの風が強く、ヤマセ現象が活発化している。
東北地方太平洋岸では、作況指数が60を割り、
なかにはゼロの地域も出ると予想されている。

(たんにエルニーニョイベントだけのこととは思えない)
この部屋は快適だが、東京でも、真夏日が例年の5分の1を割り、
当然のことながら自分の仕事は多忙をきわめていた。
(しかし・・・何か一つ釈然としない)
勇躍仕事に乗り切れない何かがあるのだ。

かなりの被害がでると思われた地震も以外に軽く、
津波にいたっては、大被害になると予想されていたのに、
あっけなく消えてしまった。
現地に行きたいと申し入れた時、
所長は、この津波はすぐに収まると断定した。
(所長には分かっていたのだろうか)

曲は最近この部屋で毎日同じようなことを、
意味もなくやらされtいるような気がした。
たしかに自分は研究さえ出来れば良いと思っている。
だがこの研究所は、
特に企業のためにやっているという雰囲気はまったくない。
(とにかくここは、ちょっと普通ではない)
破格の厚遇で迎えられた曲は、
今まで、何か見失っていたのではないか。
その欠落した感じに、気づきつつあった。
火の付いていないマドロスパイプをくわえた彼の姿は、
うすれていく夕日のなかで逆光になり、黒ずんだまま動かない。

S字形デスクで、電話がなる。
「部長、月刊GOOからお電話でございます}
交換嬢の声が告げた。
彼女も又、ここの内容など分からぬまま、ただ線と線を繋いでいるのだ。
(人は、自分がほんとうは何をやっているのか、
分かっていないのかも知れない)
曲はGOOからの電話に、
依頼原稿を明日中に送ると答えて、無愛想に受話器を置いた。

(序破急計画最終章、26~27へ続く)

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NO 198

序破急計画

21

8月のある日、教団ビル60階。
「”序の舞”終了。太平洋入水者、極東各国合計216名」
コンピュータの声がきこえる。
「”序の舞”終了。有資格者19名中、18名獲得」
(おや、残りの一人はどうした)
紫(ヴァイオレット)クラスNO1が問うた。
(事故でした)
NO4が答える。
(事故ねぇ)
 
 突然紫色の霧の中に映像が浮かんだ。
 20歳前後の男が、何人かの静止を振り切り、
 一直線に走り出して、建物を飛び出していく。
 映像が変わり、
 同じ男が大小の曲がりくねった木々の中を
 うろついている姿が拡大される。

(ここは、青木ヶ原だな)
(ええ、新生火山地震研究所です。
彼は覚醒の途中で、突然狂ったように飛び出したのです)
(それでどうした)
(2時間ほどで、探査網から消えました。
そんなに距離があったわけではないのですが)
(惜しいことをしたな)
(ええ、T大の学生だそうですが、
あまり論理的に考える習慣がつきすぎて、障害になったのです)
(過ぎたるは何とやらと言うからな)
NO1のいつもの語り口である。
(所長はなんて言ってるの)
NO3の妖艶な女が問う。
(青木ヶ原では、よくあることだと言ってすぐ探査を打ち切りました)
(まぁ、彼もブルークラスだ。任せておけば良いだろう)
紫色の霧がひときわざわめいた。
その中からNO1が姿を現すと、NO3,NO4も近くに寄ってくる。

22

「阿井さんはまだなの」
女が肉声に戻した。
「いまごろは、こちらに向かっているだろう。
なにしろ大きく時を超えられるのは彼だけなんで、
最近は特に忙しいんだ」
「ムーね」
(・・・・・)
3人は顔を見合わせる。

 天の羽衣教団導師、阿井舜真は時の旅人であった。
 それにしても1万年以上の時を翔ぶということは、
 どれほどのエネルギーを必要とするのだろうか。
 そしてその過程において、どんな経験をしているのだろうか。

「”破の舞”進行中。初期核分裂成功」
コンピュータの声がいくぶんくぐもってきこえる。
「海底火山ばかりではなく、
大きな地震まで起こしてしまい申し訳ありません」
NO4が恐縮している。
「新生火山地震研究所では、
世界各地と瞬時に結ぶ情報網を駆使して、計画を進めているのですが、
今回だけは、やむを得なかったのです」
「なるほど、風船を膨らます時には、最初の一吹きに力がいるからな。
しかし、関係のない連中に恐怖感を与えるのは良くない」
「それに、津波はよけいよ」
「分かっています。すぐに中和波をだして、
なんとか間に合わせましたが、大きな被害を出すところでした」
「そんなことになったら、
上の”白のおかた”に、ひどくどやされるところだったわ」
「いずれにしても、これからは、
小規模なものを除いて火山も地震も起こらないはずですから、
今回だけは、目をつぶっていただきたいと思います」
NO4が頭を下げた。
 
 三流会社の重役といった感じの肥満体だが、
 立ち居振る舞いが折り目正しいこの男は、
 どうやら教団のすべてのオペレーションを担当、統括しているらしい。

「そろそろ、お茶にしましょう」
彼が小さく瞬きをすると、
曲がりくねった透明な長い注ぎ口のついたポットと紅茶カップが、
ゆっくりと空中を移動してきて、
同時にせり上がった床の一部の上に下りた。
「ちょっと待ってよ」
NO3が言った。
「昔からお茶は手で淹れるものと決まっているのよ。
紅茶だって、最後は注ぎ方で味が決まるんだから」
彼女はポットを取りあげ、慎重な手つきで四つのカップを満たした。
立ち上る湯気に見え隠れするように、
半裸の胸が上下し、強い香りと共に、悩ましい曲線を描く。

23

霧のなかから阿井舜真の長身が近づいて来た。
「遅くなりました」
彼はそのまま3人のなかに加わり、
NO3に渡されたカップに口をつける。
「ちょっと味がうすくなりましたね」
阿井は、まるでずっとみんなと一緒だったかのように打ち解けている。
「ええ、今年は富士山麓に自生するコケモモの発育が、
あまり芳しくないのですわ」
NO3が科を作る。
「所長の話だと”破の舞”とエルニーニョの相乗効果だそうです。
これもまた、大事の前の小事だと考えていただきたいと思います」
NO4がしかつめらしく言う。

ふいに4人の頭上で、白光がひらめいて、消滅した。
(順調でけっこうだ。できれば”急の舞”は実行したくないので、
そのつもりでいてほしい。
それから、あまり人心を惑わすことのないよう、気をつけてくれ)
”白のおかた”の思念だけがその空間に残っている。
「”破の舞”進行中。火山性ガス集積、膨張中」
コンピュータの声が流れる。

(序破急計画24~25へ続く)
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NO 197

縮小_陸奥
縮小_東奥

皆様、おかげさまで、メロスが無事走りました。
お運びいただいた皆様、応援してくださったみなさま
ありがとうございました。
そして、出演のみなさまと、実行委員の皆様おつかれさまでした。

序破急計画

19

編集部は、あの地震以来多忙をきわめて、
新米の美雪も、気を緩めることができなかった。
恂子が、さりげなくカバーしてくれるので、助かっているが、
たまには、夕食をかねて、
ムードのある店でちょっと飲みたい、と思ったばかりであった。
(この先輩は不思議だ)
「この地下に”近鉄”・・・じゃなくて、
バッファローズ新宿ってステーキ専門店があるんよ」
恂子は屈託がない。
(そういえば、初めて出社した時もそうだったわ)
喉が渇いてたまらなかった自分に、お茶を淹れてくれたことを思い出す。
「それにワインもいけますわよ」
恂子がおどけたように続ける。
「ええ、ステーキ、私も大好きなんです。ぜひお願いします」
「じゃぁ決まりね」

恂子は美雪の探るよう眼差しを気にする風もなく、
男言葉の理佳をまねたり、ちょと岡田のなまりをいれたり、
どれが自分だかかわからない言い方をする。
(編集長のことをあまり言えないわね)
恂子は再び鉛筆を動かしながら、ちらっと岡田のほうをうかがった。
岡田は上着を脱いで、ネクタイの胸もとをゆるめ、
両足を机の左側にあげている。
顔のあたりが紫煙にかすんでいるのではっきりしないが、
目を閉じて、ぼんやりしているように見える。

20

(また、しばらくは会えないでしょう。
でも、そのペンダントがあるかぎり、毎日会っているのと同じことなのです)
恂子の胸に阿井舜真の言葉が甦る。

 アマランサスの蝶の通路で、額に彼の唇を受けた時、
 自分の中に沸き上がってくる熱いものが吸い取られ、
 また、逆流して渦を巻いている感覚に襲われた。
 一瞬に失われ、次の一瞬に回復するエネルギーの急流であった。
 恂子は、ただそれに翻弄され、眩暈を感じるなかで、
 今後自分は、この人と共に行くのだと感じていた。
 
 ほとんど力が抜けてしまったようになって、
 阿井に支えられながらアパートの階段をあがった時、
 ふと、教団ビルの階段でのことを思い出していた。
 あの時の阿井の茫洋とした瞳が、
 すでに、現在の自分を決定していたのかもしれないと思った。
 阿井はアパートの前で恂子の顔を上に向け、
 じっと目を見つめながら言ったのだった。
 恂子は後ろ手にドアの取っ手をしっかり握りしめ、
 満足とも、そうでないともいえる、複雑な気持ちで、
 ゆっくりと階段を降りていく阿井の姿を見送っていた。

(毎日会っていると同じことだなんて・・・)
机上に鉛筆を置き、恂子は心の中で、
別れ際に言った阿井の言葉を繰り返していた。
ペンダントに手がいく。
目をつぶった。
阿井の唇を受けた額のあたりに、微笑みながら、うなずいている彼の姿が、
おぼろげに浮かび上がった。
恂子は、あの時以来自分の内側に起こる不思議な変化を、
ようやく分かりかけてきていた。

(序破急計画21~23へ続く)

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NO 196

縮小_東奥日報2017年6,22
縮小_東奥日報2017年6,22-2
いよいよ3日後にせまりました。
皆さんおそろいで、お運びください。


序破急計画

17

8月に入ると、アムール河、黄河、長江などの水量が増し、
特に長江では各所で氾濫して、死者もでていた。
日本においては、山陰や北九州で同様な現象が見られ、
福岡県では、例年の5倍の降水量が記録されている、
北海道でも、石狩川が増水し、水害騒ぎが起こっていた。
黒潮はひとかけらの断水塊も残さずに大蛇行し、
三浦半島まで下りてきた親潮が居座っていて、
東北地方を中心に冷害の可能性が強まっていた。

その観点から見ると、フランスでは、日照時間不足のため、
ブドウの生産がおちて、ワイン産業に多大な影響を与え、
逆にソ連では、
干ばつのために、穀物生産の30%の減少が見込まれていた。
他方人為的な事件では、誘拐や失踪が世界的に広がり、
日本でも若年層を中心に13人が行方不明のままになっている。

(いったい、どうなるのかしら)
月刊GOO編集部の槙原恂子は、鉛筆を動かしながら考える。
世界的に自然と人間の異常が同時に進行しているのだ。
今や、予言が当たったなどという問題ではない。
日本中が世界中が、破局に向かって動き出したような気がする。
(そしてこんどの地震だわ。でも、どうして・・・)
環太平洋火山帯に沿ってほぼ同時に発生した地震は、
津波もふくめて奇跡的といえるほど被害が少なかった。

18

「先輩、お茶をどうぞ」
星野美雪が、編集部の特製茶をいれてきた。
気づかなかったが、部屋にいる全員に運んでいたらしい。
「ありがとう」
受け取りながら、恂子はつい3ヶ月前の自分を思い出す。
編集部の連中に、よくこうしてお茶を入れたものだった。

理佳からは、その後なんの連絡もない。
落ち着いたらハガキくらい来てもよさそうなものである。
(結婚はうまくいったのかしら)
「先輩、何を考えているんですか」
「えっ、ああこのお茶、相変わらず色だけは本物ね」
恂子と美雪は顔を見合わせ笑う。
ほんとうに、これじゃあ理佳と二人の時と同じだわ。
それに、何となく男言葉になっている自分を思うと、
また、ウフフと追加笑いが出る。
しかし、美雪はもう仕事に戻っている。
彼女は今、誘拐や失踪など、主に人為的な事件についてまとめている。

ふと、阿井の面影が浮かんだ。
あの日アパートまで送ってくれて別れたきりだった。
(こんなものなのかしら・・・)
普通はもっと毎日のように逢いたくなるのではないだろうか。
(もう2ヶ月になるわ・・・)
手が胸のペンダントを探っていた。
人差し指と親指の腹でかるくはさんででこする。
たった今わき上がった疑問が嘘のように消滅する。
同時に美雪が編集部の環境に慣れきれず、
精神的に疲労しているのが分かった。
表面には出さないけれど、美雪はだいぶまいっているらしい。

「仕事終わったら夕食でもどう?」
恂子は美雪の肩をつついた。
「えっ!?」
美雪の鉛筆が宙に止まった。

(序破急計画19~20へ続く)

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NO 195

序が級計画

15

2週間後。
三枝由美は自分の部屋を念入りにみがいて、
白い小型のテーブルに、ちょっとしたおつまみを並べた。
3枚の皿と、小どんぶりの位置をもう一度なおしてから、
鏡に自分の和服姿を写してみる。
午後11時。
チャイムもなく、扉が開いた。
「お帰りなさい」
由美はささやくように言って男の腕に捉えられる。
長い接吻の後、一つ吐息を漏らして男の背広を脱がせる。
着替えを終えた男がソファーに座る。
由美は冷蔵庫からビールをとりだし、
腰を斜めにして男の向かい側の椅子に座り込むと、
袖に手を添えて2人のグラスを満たした。
(・・・・・)
静かにグラスが合う。
男はグラスを一気にあけ、
目の前に用意されているタバコに手を伸ばす。
由美はまるで男の呼吸をはかったように、ライターに点火する。
男は大きく吸い込んだ煙を静かにはき出す。
二人の姿が一瞬紫煙に煙った。

「集団自殺をはじめ、若年層の誘拐や失踪など、一連の事件は、
天の羽衣教団が行っている”序の舞”であることがわかりました」
由美はその場の雰囲気にはほど遠い言葉を口にした。
「教団はすでに”破の舞”を実行中とのことです」
「おそらくこの海底火山の噴火や地震も、その一部だろう」
「この津波もでしょうか」
「ウム、」
「でも、こんなに被害が小さくてすんだのは、不思議ですわ」
「チリ津波を日本津波が迎え撃ったのだ。
無人の海中でエネルギーがぶつかり、空中へ放出されたのだ」
由美は男の空になったグラスにビールを注いだ。

16

「やはり何らかの意図があってのことにちがいない」
男は半分ほどを一息で飲み、小どんぶりの中の白いかたまりをつつく。
「序の舞は静かに淡々と進み、破の舞につながる。
そして急の舞で、文字どうり一気に舞い上がるのだ」
「急の舞については、まだ情報が入っておりません。
それから前から調査中であった、教団の階梯のことですが・・・」
由美が続ける。
「10階梯のうち第1階梯は関係者なら誰でもなれるもので、
常務の大沢もそうです。
でも2階梯以上は、ある力(パワー)がないと上がれないということです」
「・・・それで」
「2階梯から8階梯までは、
虹の色のように、
波長の長いものから順に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫となっていて、
紫は導師と呼ばれ、日本には4人しかいないということです」
「もちろん上にいくにしたがって力が大きくなるということだな」
「そうです。現在分かっているのは、
ビルそのものの構造が1階梯は18階まで、2階梯は27階、
3階梯は33階までしか上れないようになっているらしい、ということだけです」
長い間2人の話が続いていた。

(序破急計画17~18へ続く)

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NO 194

縮小_走れメロス音楽祭ビラ

月刊弘前2017/6月号巻頭言
初めての試みです。
お運びいただければ幸いに思います。


序破急計画

12

7月1日正午。
気象庁は気象資料総合システム”コスメッツ”により、
三陸から関東地方に津波警報をだし、
東京をはじめ、神奈川、千葉、静岡の各県に対しては、
内閣総理大臣による警戒宣言が発せられ、避難命令が出された。
しかし、伊豆の六星海洋気象研究所は、
震源地に近いにもかかわらず、地震による被害は皆無であった。
六星グループが開発したショックアブソーバーが
全国ネットのスーパーコンピュータと連動して即時に作動し、
最初の揺れが来た直後から、わずかにゆれている程度にしか感じなかった。
曲立彦は、震度5という報道に、むしろ驚いたくらいで、
六星グループの技術水準の高さに、あらためて舌を巻いていた。

「あと4時間か」
S字に曲がったデスクの端でテレタイプがカタカタと音を立てている。
また部屋が微かにゆれた。
曲は火の付いていないマドロスパイプをくわえ、
デスクの右端の小引き出しを開けて、コーヒーをたのむと、
形状記憶ソファーに座り込んだ。
外では大変が事態を迎えようとしているのに、
ここは、安全で心地よい。
考えて見れば人生とは不公平なものだ。
誰かが浮かべば誰かが沈む。
(みんなが幸せになるなんてことは、出来ない相談かも知れない)
曲は”いるかⅡ号”に乗って以来
なんだか自分が物思いにふける癖がついたような気がした。
(四倉はおしい男だった)
自分を見つめて指示を仰いでいた、四倉助手の熱い視線が思い浮かんだ。

13

ラボ助手がコーヒーを置いて出て行くのと入れ替わりに
主任研究員が走りこんで来た。
「部長、今の地震で日本側からも、津波が太平洋に向かっています」
「何!」
曲は手にしたブルーマウンテンを置くなり、スパコンの端末に向かった。
素早く動く指によって、次々と出てくる情報と、数字や図形を交えたデータを、
さらに重ねてインプットする。
ほとんど同時に結果がデジタルとアナログの両方式で、スクリーンを埋める。
「2時間後だな」
後ろに立っている部下に言った。
「チリ津波と日本津波がぶつかることになる」
「南鳥島と硫黄島の中間あたりです」
答えが彼のちじれた髪の毛に返ってきた。
「こんなことがあり得るのでしょうか」
「ウーム」
曲はもう一度せわしくキーを叩き、画面を凝視した。
「まちがいない」
曲は今まで息をしていなかったかのように、2,3度大きく深呼吸した。
そばにいる研究員のことなど眼中にない。
デスクの小引き出しを開けて所長に連絡し、足早に部屋を出て行く。
研究員は、部長の勢いにはじき出されたように、隣室に消えた。
無人の部屋にカタカタとテレタイプの音が響く。

14

所長室に入るやいなや、曲は身体に似合わない大きな声を出した。
「所長、どのように対処したらよろしいでしょうか」
所長は腕を組んで曲を迎える。
「緊急にメンバーを選りすぐって現地に飛びたいのですが」
「そう焦ることはあるまい。六星グループのチャーター機が、
もう現地に行ったいる。もうすぐ現場の映像が送られてくるはずだよ」
「しかし、自分の目でたしかめたいのです」
「まあ君、そう興奮せずにかけたまえ」
所長は自分のデスクから立ち上がって、
大きな応接セットに深々と身を沈めた。
テーブルの脇についているボタンを押して秘書を呼び、
顎の下をゆっくり撫でる。
「所長!」
曲は立ったままだった。
「お言葉ではありますが・・・」
隣室から秘書が現れた。
「君はたしかブルーマウンテンだったね」
所長は自分の分と二つ持ってくるように秘書に言いつけている。
曲はしかたなくソファに腰を下ろした。
「所長、この現象は単なる偶然ではないと思います。
原因に腑に落ちないところがあるのです」
秘書が王朝風のコーヒーセットを運んで来た。
「世の中にはまだまだ我々の知らないことがたくさんあるものだよ、君」
所長はカップを持ち上げ、別の手で顎を撫でながら、曲を眺めている。
「しかし所長・・・」
次を言おうとした曲を手で制して所長が断定した。
「行く必要はない。津波はじき収まる」

(序破急計画15~16へ続く)

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NO193

縮小_陸奥新報5月22日
第20回記念未来コンサートの批評が紙上に載りました。
朝山先生ありがとうございました。
(写真など詳細は、上部主催イベントのボタンをクリックするとご覧になれます)。


序破急計画

10

「震源地は伊豆半島沖20キロ、震源の深さは30キロ、
マグニチュードは6.9であります」
室内の無事なテレビが言っている。

「特に異常はないようだな」
山崎が全体を眺めて言った。
「へぇ震度5だってよ。
くわばら、くわばら、あたしゃ低血圧がぶっ飛んだよ」
「とたんに腹が減ったと言いたいんでしょう」
「アタリー」
大川と小山の弥次喜多コンビがやりあっている。
「バッカヤロウ。取材だ取材、早く行かねぇか」
山崎が怒鳴る。

(こんな時こそ、みんながしっかりしなくちゃいけないのね)
恂子は、肩に取材バッグをせりあげ、
いつも持ち歩く小型カメラを片手に、美雪に声をかけた。
「初陣だわよ!」
美雪ははじかれたように立ち上がった。
新調らしいスーツ姿が、この場の雰囲気に妙にいたいたしい。
「星野君はいいんだよ」
山崎がやさしい目をした。
「それじゃぁ・・・」
恂子は、もうあらかたいなくなった連中を追いかけるように、
部屋を飛び出した。

マグニチュード6.9、震度5というわりに被害は予想より小さかった。
古い小型ビルの倒壊はあったものの、
ほとんどはひび割れや、ガラスの破損程度に留まり、
高層ビルに至っては、まったく被害がなかったと報道された。
「思いのほかだったね」
「関東大震災の時の、2倍以上は持ちこたえられるように
設計されているというのは、事実のようですね」
連絡のため残っていた二人が、テレビ画面を見ながら言った。

11

紫煙が立ち上がっている。モカのいつもの席である。
岡田遥之は向かい側の椅子に両足を上げ、
おもむろにポケットから細長い紙片を取り出した。
表面には6桁の数字が順にきちんと並んでいて、
彼は指でそれを追いながらうなずいている。
三枝由美がカウンターの中にいた。他に客はいない。
岡田の為にひいた専用の豆の香りが,
やわらかなセミクラシックの音楽にのって、二人の空間を満たしている。

「太平洋の各地で、ほとんど同時に地震が発生している」
「天の羽衣教団ですわね」
由美が小さな口を開く。
「環太平洋火山帯に沿って起こっているが、
プレートの沈み込みによるものではない」
「・・・と言いますと」
「まだ調査中だが、海底自体に何らかの異常が起こっているらしい」
岡田はやおら足を下ろし、カウンターに移ってきた。
「最大のものはチリ沖で、M7.7だ。かなり被害がでている」
「サンチャゴの教団ビルは?」
「無事だ」
「そうですわね」
由美は当然のことのようにうなずいている。
「まあ、チリ以外ではたいした被害ではないのだが、問題は・・・」
岡田は言葉を切り、新たなタバコに点火して言った。
「津波だ」
「ツネミ・・・」
「そうだ、現在、太平洋中央部は異常に水位が上がっていて、
洪水騒ぎが持ち上がっているほどだ。
それにチリ津波が押し寄せたとしたら、大被害になりかねない」
「たしか、前に三陸地方でそんなことがありましたわ」
「今回は22時間以内に来る。三陸と同程度の規模になろう。
もちろん政府はもう手を打っていると思うが・・・」

岡田は最後を独り言のように言って店の外に目を向ける。
人の動きがはげしい。
今の地震で地下街の店は、
かたづける作業が山ほどあるにちがいない。
それにしては、モカはやけに落ち着いている。
カウンターの後ろにある棚の品々にも一切異常はないようだ。

「教団は”序破急の舞”という計画を
実行に移していることがわかりました。ついさっきのことですわ」
「うむ、おそらく彼らの計画の
日本又は極東におけるコードネームだろう。
内容はまだ分からないのか」
「調査を開始しましたが、まだのようです」
「それと、前から依頼していた教団の階梯についてだ」
由美は岡田の視線が、
じっと自分の胸に注がれているのを意識していた。
やがて由美は俯き加減に目を伏せたまま答えた。
「ハイ・・・」
声がかすれていた。

(序破急計画12~14へ続く)

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