NO 196

縮小_東奥日報2017年6,22
縮小_東奥日報2017年6,22-2
いよいよ3日後にせまりました。
皆さんおそろいで、お運びください。


序破急計画

17

8月に入ると、アムール河、黄河、長江などの水量が増し、
特に長江では各所で氾濫して、死者もでていた。
日本においては、山陰や北九州で同様な現象が見られ、
福岡県では、例年の5倍の降水量が記録されている、
北海道でも、石狩川が増水し、水害騒ぎが起こっていた。
黒潮はひとかけらの断水塊も残さずに大蛇行し、
三浦半島まで下りてきた親潮が居座っていて、
東北地方を中心に冷害の可能性が強まっていた。

その観点から見ると、フランスでは、日照時間不足のため、
ブドウの生産がおちて、ワイン産業に多大な影響を与え、
逆にソ連では、
干ばつのために、穀物生産の30%の減少が見込まれていた。
他方人為的な事件では、誘拐や失踪が世界的に広がり、
日本でも若年層を中心に13人が行方不明のままになっている。

(いったい、どうなるのかしら)
月刊GOO編集部の槙原恂子は、鉛筆を動かしながら考える。
世界的に自然と人間の異常が同時に進行しているのだ。
今や、予言が当たったなどという問題ではない。
日本中が世界中が、破局に向かって動き出したような気がする。
(そしてこんどの地震だわ。でも、どうして・・・)
環太平洋火山帯に沿ってほぼ同時に発生した地震は、
津波もふくめて奇跡的といえるほど被害が少なかった。

18

「先輩、お茶をどうぞ」
星野美雪が、編集部の特製茶をいれてきた。
気づかなかったが、部屋にいる全員に運んでいたらしい。
「ありがとう」
受け取りながら、恂子はつい3ヶ月前の自分を思い出す。
編集部の連中に、よくこうしてお茶を入れたものだった。

理佳からは、その後なんの連絡もない。
落ち着いたらハガキくらい来てもよさそうなものである。
(結婚はうまくいったのかしら)
「先輩、何を考えているんですか」
「えっ、ああこのお茶、相変わらず色だけは本物ね」
恂子と美雪は顔を見合わせ笑う。
ほんとうに、これじゃあ理佳と二人の時と同じだわ。
それに、何となく男言葉になっている自分を思うと、
また、ウフフと追加笑いが出る。
しかし、美雪はもう仕事に戻っている。
彼女は今、誘拐や失踪など、主に人為的な事件についてまとめている。

ふと、阿井の面影が浮かんだ。
あの日アパートまで送ってくれて別れたきりだった。
(こんなものなのかしら・・・)
普通はもっと毎日のように逢いたくなるのではないだろうか。
(もう2ヶ月になるわ・・・)
手が胸のペンダントを探っていた。
人差し指と親指の腹でかるくはさんででこする。
たった今わき上がった疑問が嘘のように消滅する。
同時に美雪が編集部の環境に慣れきれず、
精神的に疲労しているのが分かった。
表面には出さないけれど、美雪はだいぶまいっているらしい。

「仕事終わったら夕食でもどう?」
恂子は美雪の肩をつついた。
「えっ!?」
美雪の鉛筆が宙に止まった。

(序破急計画19~20へ続く)

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