NO 218

戦い

7 

天の羽衣教団の記者会見は、
教団ビルのある、他の5ヶ国でも同時に行われていた。
これに対してポリネシア、メラネシア、ミクロネシアの国々は、
即日独立を認めたばかりではなく、
その傘下にはいりたいという意向を明らかにした。
彼らの論拠はきわめて明快で、
自分たちはムーの子孫であるという一言に尽きた。

しかし、その海域に島々を領有する
英、仏、ニュ-ジーランドなどの国々は、
勝手に領土を主張するネオムー帝国なるものは、
重大な侵略行為をしているとして、
グァムとウエリントンに空母をはじめとする艦隊を進行させた。

その間ネオムー帝国は、フィージー諸島ごと隆起した
30万平方キロに及ぶ最大の陸地に、次々に大型のVTOLを飛ばし、
資材を運び込んでいた。
各国の偵察機や報道陣からの情報によると、
今までの6ヶ所のビルと同型のものを建築する模様である。
そしてその頃から、
各地教団ビルのテラス状の場所に頻繁にVTOLが発着し、
教団の人間が多数現地と往き来しているのが認められた。

その後も、教団側との接触はまったくなく、
現地においても、各国の報道機の着陸はすべて拒否され、
眼下に建築されていくビルを、口を開けて眺めている状態が続いていた。

そんな時、無為無策に焦れた英国BBCのチャーター機が、
建築現場に近い場所へ接近しようと突っ込んでいった。
だが、高度500メートルまで降下した機は、
何かの障壁にあって軽く跳ね返され、失速しそうになって、
慌てて上空に逃れたのである。
ネオムー帝国は世界各国に対して、
再度このようなことが起こった場合は、
我が国に対する重大な挑戦とみなし、
何らかの形で制裁せざるを得ないと警告した。

月刊GOOの編集部は、
刻一刻と変化する情勢に息つく間もない多忙な日々が続き、
正月恒例の”予言の刻”も、無期延期になっていた。
槙原恂子はネオムー帝国独立宣言の取材をきっかけに、
エルニーニョ関係から離れ、弥次喜多コンビと美雪をふくめた、
ネオムー帝国関係専門スタッフとして、会議室に顔をだしていた。

「デスク、帝国の独立宣言後、まだ10日しかたっていないのに、
中央太平洋の国々ばかりではなく、
エルサルバドル、コスタリカ、エクアドル、ペルー、
それに教団ビルのあるチリの5ヶ国が独立を承認しました」
恂子は資料をチェックしながら続ける。
「そのうちコスタリカ、ペルー、チリは、
時期を新たにして同盟を結びたいといっています」
「ウム、そしてたった今、ハワイがアメリカ合衆国から離れて、
ネオムー帝国の傘下にはいりたいと表明した」
「しかし、アメリカだって黙ってはいないでしょう」
小山が口をはさんだ。
相変わらず小さな声だが、妙に迫力がある。
そうでなくてもグァムやウエリントンでは、
英、仏、ニュージーランドの艦隊が集結して、
不穏な動きを見せているのだ。

態度を保留していたアメリカ合衆国は、
これを機にネオムー帝国の独立に非承認の意向を明らかにし、
ハワイに対して声明の撤回を求めたのである。

(戦い9~11へ続く)

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