NO157 謎の教団3~4(NO153から連載しています)

 3

(なんだか分かったような、分かんないような気分だわ)
大沢の説明が続く。
「ここは3階ですが、上の4階と2フロアを財団で使用しております。
財団には一般の会社と同じように、
総務部、人事部、営業部、秘書室、調査室などがございます。
変わったところでは、教導部というのがありまして、
教団側から出向してきた何人かと、合同で仕事を進めております」

ほとんどガラス張りなので、通路から中の仕事ぶりがよく見えた。
良ちゃんがシャッターを切る。
「申し訳ございませんが、写真は4階までで、
それから上はご遠慮をお願いいたしております」
聞こえているのだろうか、良ちゃんはやたらと撮りまくっている。
「5階から8階までは宿泊施設で、地方からおいでになった、
一般の信者のためのものでございます」
階段を上っていくと両側にホテルのようなドアが並んでいる。
まったく足音がしない。すばらしい吸音性である。

5階からエレベーターにのって9階についた。
「ここは、入信希望者や第1階梯前の信者たちの・・・
研修の場とでも言うべきところで、
各室はそれぞれの目的に合わせて造られており、
いわば、
学校の教室のようなものと、お考えいただければよいかと思います」

各室ともドアは閉じられていたが、
上部にのぞき穴のようなものがあって、多少内部を見ることが出来る。
一般の教室のような部屋の他に、体育施設や、壁も床も真っ白な部屋、
いたるところに様々な図形が描かれている部屋、
凹凸のたくさんある、奇妙な形の部屋などが並んでいる。
しかし、どの部屋にも研修生らしかい人影は見当たらず、空室になっていた。
「研修の人たちはどうしたのでしょうか」
「ただいまちょうど、各自の部屋での、お祈りの時間になっておりまして・・・」
(フーン何か妙だな。その時間に合わせて呼ばれたようだ。
何かあるぞ。これは、きっと公表出来ないことが隠されているわ)
恂子は軽く首を振った。
セミロングの柔らかい髪がサラリとゆれた。

 4

同じ頃。ビルの18階。
白い寛衣を着た一団が、長い通路を進んでいた。
一列に並び、それぞれ2メートルほどの間隔をとりながら、半眼の表情で、
何かに強く意識を集中しているように見える。
どこかに光源があるのだろうか、
うす暗い中で、左右の壁自体が微かに発光している。
やがて列は、壁にほのかな二重のシルエットをつくって右へ曲がった。
歩みは静かで整然としている。足音はしない。
ゆっくりではあるが、遅滞のない確実な歩みである。

正面に階段が見えてきた。
列がその階段を上り始めると、左右の壁が赤く発光して、
何かが彼らに吹き付けているのが分かる。
半透明の赤い霧とでもいおうか、
それは、彼ら自身にちょっとした熱を感じさせ、殺菌効果をもたらす。
同時に彼らの頭の中には、柔らかい声が響き渡っていた。

(他に何も考えてはいけません)
(ただ一途に次の階梯へ進みたい願うのです)
(今あなた方は、
人間の苦から離脱するための”希望の階段”を上がっているのです)
霧は濃さを増し、前を行く者の姿が朧にしか見えない。
全身が燃えるように熱い。
階段を上りきると、そこは10メートルほど進んで行き止まりになっている。
正面の壁に、何か影のようなものが浮かびあがって来た。
列は、相変わらずゆっくりと確実に行き止まりの壁に向かって近づいていく。

(心を身体に感じる赤い色で満たしなさい)
(その中に白い羽衣を見いだしなさい)
(その羽衣の内にこそ、あなたの未来があるのです)
正面の壁いっぱいに、今やはっきりと、白い羽衣を纏った天女の絵が見える。
いや、絵というにはあまりにも実在感があった。
まるで壁面に本物の天女が浮き出して両腕を広げ、
心からほほえんでいるようであった。

・・・と、先頭の一人がゆっくりと羽衣の中に吸い込まれていった。
天女がその人間を抱き取ったように見える。
同じ歩調で進む一団は、2番目3番目と、次々に壁の中に消えていった。

(NO158、謎の教団5~6へ続く)

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