60周年を記念し、各団体の枠を超えて
女声、男声、混声のステージを組みました。
下記のプログラムです。
どうぞお運びください。
復活
19
10月にはいり、あちこちで紅葉の声がきかれるようになってきた。
遠く離れた太平洋で、何が起ころうと、
いや、たとえ隣で殺人が行われたとしても
無関心を決め込む人たちが何と多いことだろう。
ここ東京でも、その無関心故の事件が毎日のように起こっていた。
「人口が増えすぎたのよ」
NO3が言う。
「その中で、ほんとうに生き甲斐を持っている者は、
どれくらいいるのかしら」
「それだけならいいのですが、
生きることが他にとって非常に悪である連中がたくさんいるのです」
NO4が真面目な顔で付け加える。
「ある意味では死にたがっている人も多いんじゃないの」
「教団の中だけではなく、一般の人たちでも、
そんな人には安楽死を与えてやるべきだと思います」
「一石二鳥ってわけね」
「そうです。食料やエネルギーのことを考えると
今でも世界の人口は多いくらいです」
「方法は別としても
世界平和のためとあらば、実行することになるだろうな」
NO1が締めくくり、コンピュータに破の舞の進行状態をたずねる。
20
「”破の舞”進行中。
メラネシア、ポリネシア、ミクロネシアとも現在予定の3/5を終了。
なお浮上中」
(12月になるな)
(そうです。いよいよ我々の国土の復活です)
「”破の舞”進行中。メラネシア第23ガスチェンバー破損」
(フム、そんなこともあるだろう)
教団の”破の舞”は中央太平洋の海底をハイスピードで押し上げている。
それは海底にある岩盤の空洞に、
火山性のガスを送り込むことからはじまった。
岩盤は膨張し上部を押し上げていく。
それと同時に基部は四方から押され、さらにスピードをあげる。
「”破の舞”進行中。トンガ海峡プレートの沈み込み順調」
中央太平洋の重力減少により、
ゆっくりと潜り込んでいたトンガ海溝のプレートが、
次第に速度を増し、フィージー諸島を中心に急激な隆起が起こっているのだ。
要所要所に教団が開発した強化オリハルコンが注入され、
それぞれのガスチェンバーの外壁に、
通常の何十倍もの粘着力と堅固さを与えていた。
問題の海域は、3000メートルの海底がすでに1800メートルまで隆起し、
海上部分においても、月に1メートルの速さで地盤が上昇を続けている。
現地には毎日のように報道陣や科学者グループが往き来し、
どんなに無関心を決め込んでいる人たちも、
ただ漠然と眺めているわけにはいかなくなっていた。
(復活21~23へ続く)
上部のSF小説「ムーの幻影」のボタンをクリックすると最初からご覧になれます。