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復活

六星海洋気象研究所のコンピュータ解析室。
壁面の大スクリーンの前には、曲立彦と気象部長をはじめ、
20人ほどの研究員が座っていた。
「それでは映像を送ります」
声とともに部屋が暗くなり、
スクリーンに白黒の回転する球体が映し出された。
地球である。
白い雲に大陸が見え隠れしている。
海洋観測衛星”モモ1号”からの映像である。
球体は回転を止め、一部が拡大される。
太平洋である。

「緯度と経度、それに時間もいれたまえ」
気象部長の声がとぶ。
画面に縦横の細い線がはいり、数字が添えられる。
20度ずつの経度の上方に時計が付加される。
「着色します」
全体が青い海に、
茶褐色の島々が白い雲の間から見え隠れしている姿は、
いかにも平和そのものである。
「早く深度を色別にしたまえ」
曲がイライラしたように言った。
画面を何度も走査線が走り、
浅い所は白っぽく、深いところは濃い緑色になって、
500メートルごとに海の青さが変化していく。
「おっ!」
深度表示が完了しないうちに、
曲をはじめ、何人もの研究員が立ち上がった。
いままで記録されている太平洋の等深線と,
明らかに異なっている。
深度1000メートル以下の部分が異常に多い。
「もっと拡大しろ」
曲が怒鳴った。
スタッフが心得たように、
ちょうど赤道をはさんで白さを増している部分を拡大していく。
「これは・・・」
曲立彦はその縮れた髪の毛を突き出して絶句した。

北はマーシャル諸島から、南はフィージー諸島までが、
ほとんど1000メートル以下のごく薄い青色でつながっている。
また、東の方では、
ワシントン島から赤道をはさんでツアモツ諸島に至るラインが
薄青い色でつながり、
この二つの中間部、フェニックス島やサモア島のあたりでも、
はっきり白さを増している。
「ウーム」
曲は一つうめくと、ドサリと椅子に座り込んだ。
一呼吸してもう一度画面に目を向ける。
500メートル未満を示す白い部分が倍増している。
まるで太平洋の真ん中に、巨大な大陸棚が出来たようなものだ。
一方、その浅海を取り囲むようにしている、
東太平洋、中央太平洋、南太平洋の各海盆は、
それぞれブルーの濃さを増し、海底の沈降を示している。

スクリーンが消え、室内が明るくなった。
まだ立ったままの研究員から、一様に信じられないという声が聞こえる。
「これはプレートテクトニクスの分野だな」
気象部長が話しかけるのを無視して、曲は足早に部屋を出た。
自室の形状記憶ソfァーに潜り込むように座ると、
ここ半年間の禁煙を破った。
パイプから大量に吸い込んだ煙にむせてかがみ込む、
頭がクラクラした。

S字デスクの小引き出しが信号音をたてる。
所長からの呼び出しであった。

(復活7~8へ続く)

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