NO 225

皆様、第21回未来コンサートが近づいてまいりました。
これから活躍が期待される人たちのパフォーマンスです。
お運びくだされば幸いに思います。

21回陸奥

「ムーの幻影」
引き津好きご覧ください。

戦い

24

「GOOの仲間が動いているのだ」
岡田が由美の髪を愛撫しながら言った。
由美は椅子に座った岡田のそばに横座りして、
彼の左膝に手を置きながら、顔を上げる。
「ネオムー帝国の世界理想郷宣言は、
彼らによる世界制覇の始まりに違いない。
新しい神になることを目指しているのだ」
「戦いになるでしょうか」
「通常の兵器による戦いは、小規模なものは別として、
直接世界の破壊につながる。
結局、我々との超能力戦になるだろう」
由美は岡田の膝に置いた手に頭を預けた。
そこからでさえ、一定にに動く岡田の鼓動が伝わって来る。

ゆっくりと髪をなぜていた岡田の手に力がこもる。
由美は頭上から強い視線を感じて再び顔を上げた。
二人の視線がからみあう。
「どうしてこんなに好きなのかしら」
由美は自分のほうから伸び上がって唇を求めた。
岡田の膝に自分のふたつの膨らみが触れ、
少しずつ上方に移動していく。
激しく唇が重なった。
由美の身体に衝撃が走り、思わず彼の首に両手を回す。
岡田の指がブラウスのボタンにかかるのを感じながら、
由美は後頭部から背中へと広がっていくしびれの中に身を委ねる。
「・・・・・」
由美は右側の白く丸い丘を突然きつく握られて、
男の口の中に小さな叫びをあげた。
しかし身体は逆に彼にしがみつくように密着させている。
長い口づけであった。
・・・・・・・
岡田が静かに身体を離した。
「どうやら出かけねばならんようだな」
他人事のように言って立ち上がった。

25

それより少し前。
午後11時。
恂子は阿井と向かい合っていた。
すでに”時の部屋”は再編成されて、機能をとりもどし、
何処とも知れない時空間をただよいながら、
誰にも邪魔されることのない、二人だけに密室を形成していた。

恂子は阿井と二人でいるだけで幸せであった。
彼の中に世界があり、
それを自分も共有している想いに満たされていた。
二人は無言で見つめ合う。
どんな言葉よりも美しく、
輝く愛の旋律が、やわらかいハーモニーにのって、
お互いの瞳の奥から奥へと伝わっていった。
それは、すべての語るべき言葉とともに、
光のスピードで、二人の体内を往復する。
恂子と阿井は、同じ想いを同時に感じ、表現しているのである。
「愛しています」
それでも恂子は口に出して言った。
(愛している)
阿井が無言で答える。
二人は立ち上がり、どちらからともなく歩み寄った。
恂子が彼の胸に顔を埋める。
静かな抱擁であった。
・・・・・・・
「私は行かなければなりません」
阿井が恂子の頭上でささやいた。

26

その日、3月13日。
日本時間午前2時。
ネオムー帝国は世界理想郷宣言に反対する平和の敵であるとして、
ニュージーランド北島のオークランドを空襲した。
恂子が出社すると、夜中にたたき起こされたらしい弥次喜多コンビが、
朝夕新聞の記者や、写真家の良ちゃんとともにシドニーに飛んでいた。
「とうとうやったか」
「日本はどう対応するのだろう」
周りの記者たちが語り合っている最中にも、
次々とニュースが入ってくる。
国連はニュージーランドに全面的な援助をするという立場を明確にし、
同国の要請によって、午前7時、
ネオムー帝国の西の端にあたる、
ポナペ島を含む帝国第3の大陸塊に、ミサイルによる攻撃をかけたのである。

(戦い27~29へ続く)
上部ボタンSF小説「ムーの幻影」をクリックすると最初からご覧になれます。

カテゴリー: 定期更新   パーマリンク

コメントは受け付けていません。