皆様、第21回未来コンサートが近づいてまいりました。
これから活躍が期待される人たちのパフォーマンスです。
お運びくだされば幸いに思います。
「ムーの幻影」
引き津好きご覧ください。
戦い
24
「GOOの仲間が動いているのだ」
岡田が由美の髪を愛撫しながら言った。
由美は椅子に座った岡田のそばに横座りして、
彼の左膝に手を置きながら、顔を上げる。
「ネオムー帝国の世界理想郷宣言は、
彼らによる世界制覇の始まりに違いない。
新しい神になることを目指しているのだ」
「戦いになるでしょうか」
「通常の兵器による戦いは、小規模なものは別として、
直接世界の破壊につながる。
結局、我々との超能力戦になるだろう」
由美は岡田の膝に置いた手に頭を預けた。
そこからでさえ、一定にに動く岡田の鼓動が伝わって来る。
ゆっくりと髪をなぜていた岡田の手に力がこもる。
由美は頭上から強い視線を感じて再び顔を上げた。
二人の視線がからみあう。
「どうしてこんなに好きなのかしら」
由美は自分のほうから伸び上がって唇を求めた。
岡田の膝に自分のふたつの膨らみが触れ、
少しずつ上方に移動していく。
激しく唇が重なった。
由美の身体に衝撃が走り、思わず彼の首に両手を回す。
岡田の指がブラウスのボタンにかかるのを感じながら、
由美は後頭部から背中へと広がっていくしびれの中に身を委ねる。
「・・・・・」
由美は右側の白く丸い丘を突然きつく握られて、
男の口の中に小さな叫びをあげた。
しかし身体は逆に彼にしがみつくように密着させている。
長い口づけであった。
・・・・・・・
岡田が静かに身体を離した。
「どうやら出かけねばならんようだな」
他人事のように言って立ち上がった。
25
それより少し前。
午後11時。
恂子は阿井と向かい合っていた。
すでに”時の部屋”は再編成されて、機能をとりもどし、
何処とも知れない時空間をただよいながら、
誰にも邪魔されることのない、二人だけに密室を形成していた。
恂子は阿井と二人でいるだけで幸せであった。
彼の中に世界があり、
それを自分も共有している想いに満たされていた。
二人は無言で見つめ合う。
どんな言葉よりも美しく、
輝く愛の旋律が、やわらかいハーモニーにのって、
お互いの瞳の奥から奥へと伝わっていった。
それは、すべての語るべき言葉とともに、
光のスピードで、二人の体内を往復する。
恂子と阿井は、同じ想いを同時に感じ、表現しているのである。
「愛しています」
それでも恂子は口に出して言った。
(愛している)
阿井が無言で答える。
二人は立ち上がり、どちらからともなく歩み寄った。
恂子が彼の胸に顔を埋める。
静かな抱擁であった。
・・・・・・・
「私は行かなければなりません」
阿井が恂子の頭上でささやいた。
26
その日、3月13日。
日本時間午前2時。
ネオムー帝国は世界理想郷宣言に反対する平和の敵であるとして、
ニュージーランド北島のオークランドを空襲した。
恂子が出社すると、夜中にたたき起こされたらしい弥次喜多コンビが、
朝夕新聞の記者や、写真家の良ちゃんとともにシドニーに飛んでいた。
「とうとうやったか」
「日本はどう対応するのだろう」
周りの記者たちが語り合っている最中にも、
次々とニュースが入ってくる。
国連はニュージーランドに全面的な援助をするという立場を明確にし、
同国の要請によって、午前7時、
ネオムー帝国の西の端にあたる、
ポナペ島を含む帝国第3の大陸塊に、ミサイルによる攻撃をかけたのである。
(戦い27~29へ続く)
上部ボタンSF小説「ムーの幻影」をクリックすると最初からご覧になれます。