NO 235

出発(たびだち)

「女王陛下!」
4人が感動の声をあげた。
青い海の上空に浮かんでいる女性の像はたちまち拡大し、
今や空全体に広がっていた。
それは天の羽衣教団18階の壁に描かれていた羽衣そのままの、
天女の姿にほかならなかった。
(・・・・・・・)
女王の清らかな波動が伝わった。
「”急の舞”でしょうか」
(・・・・・)
「どうしてもだめなのでしょうか」
(・・・・・)
「はい、羽衣をラグランジェ点まで移動させます」
(・・・・・)
「お待ちください!もう一度ムーを、ネオムーを・・・」
4人の声に必死の思いがこもる。
だが彼らの前にさえ初めて出現した女王の姿は、
重合する音群の彼方へと溶け込んでいく。
上空には色とりどりのきらめく光と、音の融合だけが残っていた。

また海鳴りがする。

その同じ音は東京のアジア総大使館にも響いていた。
「”破の舞”進行中。雌阿寒岳、駒ヶ岳、浅間山、三原山、
雲仙、阿蘇山、桜島活動中」
コンピュータの声がする。
紫色の霧の中に、
三原山と浅間山の噴煙にはさまれた
陰鬱な東京の街並みが映し出されている。
(今、中央政府より指令がはいった。
やはり”急の舞”は実施される。羽衣は移動を開始したそうだ)
NO1が断定した。
(でも”破の舞”は成功しているんでしょう)
(うむ、すでに帝国の傘下に入った国は140を超え、
約2億4000万の人口減となっている)
(順調じゃないの、なのにどうして・・・)
(GOOが関係していますね)
阿井が静かに言った。
このビルでNO4の消滅と同時に、
新生火山地震研究所と六星海洋気象研究所の所長をはじめ、
ブルークラス4人が廃人となっている。
(ほんとうに一瞬のことだったわ)
NO3が岡田の出現と、No4の消滅を再現させて、
恐怖と欲情の入り交じった雰囲気をふりまいた。

遠い海鳴りの音がコンピュータの発生装置をふるわせる。
(ところでさっき”白のお方”から確認されたんだが、
ビチアス海淵の調査はどうなっている)
(太田黒に命じて例の”しんかい6500”を稼働させることになっていますわ。
今頃はもう現地でしょう)
NO4の消滅の後、彼の仕事を引き継いだNO3が答えた。
目の前の三原山が音のない火柱を噴き上げる。
(所長の後任は見つかりましたか)
(ええ、新生火山地震研究所のほうはブルークラスに専門家がいましたが、
・・・・・六星のほうは、この際つぶしてしまおうと考えていますわ)
この妖艶な女は、いつものように、あっさりと言ってのけた。

(出発5~7へ続く)

 

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