NO 218

戦い

7 

天の羽衣教団の記者会見は、
教団ビルのある、他の5ヶ国でも同時に行われていた。
これに対してポリネシア、メラネシア、ミクロネシアの国々は、
即日独立を認めたばかりではなく、
その傘下にはいりたいという意向を明らかにした。
彼らの論拠はきわめて明快で、
自分たちはムーの子孫であるという一言に尽きた。

しかし、その海域に島々を領有する
英、仏、ニュ-ジーランドなどの国々は、
勝手に領土を主張するネオムー帝国なるものは、
重大な侵略行為をしているとして、
グァムとウエリントンに空母をはじめとする艦隊を進行させた。

その間ネオムー帝国は、フィージー諸島ごと隆起した
30万平方キロに及ぶ最大の陸地に、次々に大型のVTOLを飛ばし、
資材を運び込んでいた。
各国の偵察機や報道陣からの情報によると、
今までの6ヶ所のビルと同型のものを建築する模様である。
そしてその頃から、
各地教団ビルのテラス状の場所に頻繁にVTOLが発着し、
教団の人間が多数現地と往き来しているのが認められた。

その後も、教団側との接触はまったくなく、
現地においても、各国の報道機の着陸はすべて拒否され、
眼下に建築されていくビルを、口を開けて眺めている状態が続いていた。

そんな時、無為無策に焦れた英国BBCのチャーター機が、
建築現場に近い場所へ接近しようと突っ込んでいった。
だが、高度500メートルまで降下した機は、
何かの障壁にあって軽く跳ね返され、失速しそうになって、
慌てて上空に逃れたのである。
ネオムー帝国は世界各国に対して、
再度このようなことが起こった場合は、
我が国に対する重大な挑戦とみなし、
何らかの形で制裁せざるを得ないと警告した。

月刊GOOの編集部は、
刻一刻と変化する情勢に息つく間もない多忙な日々が続き、
正月恒例の”予言の刻”も、無期延期になっていた。
槙原恂子はネオムー帝国独立宣言の取材をきっかけに、
エルニーニョ関係から離れ、弥次喜多コンビと美雪をふくめた、
ネオムー帝国関係専門スタッフとして、会議室に顔をだしていた。

「デスク、帝国の独立宣言後、まだ10日しかたっていないのに、
中央太平洋の国々ばかりではなく、
エルサルバドル、コスタリカ、エクアドル、ペルー、
それに教団ビルのあるチリの5ヶ国が独立を承認しました」
恂子は資料をチェックしながら続ける。
「そのうちコスタリカ、ペルー、チリは、
時期を新たにして同盟を結びたいといっています」
「ウム、そしてたった今、ハワイがアメリカ合衆国から離れて、
ネオムー帝国の傘下にはいりたいと表明した」
「しかし、アメリカだって黙ってはいないでしょう」
小山が口をはさんだ。
相変わらず小さな声だが、妙に迫力がある。
そうでなくてもグァムやウエリントンでは、
英、仏、ニュージーランドの艦隊が集結して、
不穏な動きを見せているのだ。

態度を保留していたアメリカ合衆国は、
これを機にネオムー帝国の独立に非承認の意向を明らかにし、
ハワイに対して声明の撤回を求めたのである。

(戦い9~11へ続く)

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NO 217

戦い

二重の自動ドアを通り、ロビーに入ると、
三大新聞をはじめ、各テレビ局の取材陣が多数たむろしている。
会場に指定された3階の第一会議室で待っていると、
正午前、財団理事長の古谷と、常務の大沢が現れた。
うるさかった場内が嘘のように静まる。
前方の会見席についた二人は、
しばらく記者たちを見回していたが、
時計を見て頷き合い、まず古谷が立ち上がった。
「天の羽衣教団は、本日正午をもって、
中央太平洋に隆起させた陸塊群を固有の領土とし、
ここに、独立を宣言するものである」
古谷の声音にはよどみがなく、
会見の弁などは、一切省略されている。
「国名は”ネオムー帝国”である」

フラッシュが一つ上がり、続いて白光が入り乱れた。
しばらく声を失っていた場内のあちこちから、
”ネオムー”を繰り返す言葉や、
「なんだそりゃ」という声が飛び交う。
「以後いかなる国も
ネオムー帝国の領土近海50海里以内に入ることを禁ずる」
古谷は記者団を見渡し、威圧するように続けた。
「世界各国は速やかに、
ネオムー帝国の独立を承認するものと期待している」

記者団側は騒然となった。
あちこちから質問の矢が飛ぶ。
「帝国というと、代表者は皇帝ですか」
「もし、陸塊群をそちらの領土と認めない場合はどうなさるのですか」
「主張する領海に他国の船舶が入った場合はどうですか」
つわものたちが矢継ぎ早にまくし立てた。

大澤が答える。
ネオムー帝国は女王の国である。
女王は目下不在だが、4人の枢機卿の合議によって国事がなされ、
現在ある六カ所のビルがそれぞれの地区の総大使館を兼ねるという。
「アジア地区では、古屋が総大使、
私、大沢が、日本におけるネオムー帝国の大使の役割を担いますので、
よろしくお願い致します」
大沢が深々と頭を下げた。
「先ほどのご質問ですが、
不当に我が国の領土が侵犯されることがあれば、
当然報復することになるでしょう」
大沢はやわらかいが断固とした調子で言い切った。

記者団も黙っていない。
「その陸塊群に領土権を主張する根拠は何ですか」
前から2列目の男が立ち上がって言った。
「それは、われわれネオムー帝国が築き上げた領土だからです」
「ということは、先ほどの宣言にあったように、
隆起させて得た領土だということですね」
「そのとおりです」
大沢の答えに記者席からは、言葉にならないうなり声があがった。
今まで世界中を騒がし、多数の死者をだした、異変や事件は、
すべて、天の羽衣教団(ネオムー帝国)の意図によるものだと
公表されたのである。

それについての大沢の弁は、
なんと人類全体の幸福のためだと言うのだ。
ネオムー帝国はその大きな目的のためにこそ、
独立するのであるから、多少の犠牲はやむを得ないし、
独立を承認しないということは、
世界平和に背を向けるものであると断定した。
よって各国は
すみやかに、ネオムー帝国の独立を承認すべきであると結んだ。

最後に大沢大使は、ネオムー帝国の国旗を披露した。
旗の表面には、
アマランサスの扉に付いていたレリーフと同じ
太陽の紋章が、くっきりと浮かび上がっていた。

(戦い7~8へ続く)

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NO 216

戦い

中央太平洋に多数の陸塊群が浮上してから2週間がたち、
水道橋の倒壊ビルや、水害の復旧を残したまま元旦を迎えた。
一部を除いて株は暴落し、倒産が続いた。
水害にあった一般家庭の経済に追い打ちをかけるように、
野菜などの生鮮食料品の高騰が始まった。

編集部は、この未曾有の出来事を追うために、
休日を返上して出社していた。
槙原恂子はエルニーニョ関係の仕事を一時ストップさせて、
大陸隆起記事のまとめに余念がない。
しかし、今の恂子には、
教団が次にどのようにでてくるのか、うすうす分かっていた。
阿井との時を過ごしたあと、
彼の体内から直接伝わってくる波動を捉えていたのだ。

午前10時。
岡田のデスクで、電話が鳴った。
(きたわ・・・)
岡田は例によって、机上に上げた足を下ろしながら受話器を取った。
しばらく無言で聞いている。
「そうか、分かった」という声がいやにはっきり聞こえる。
岡田は山崎を呼んで何事か話していたが、
「頼んだデェー」と言い残して部屋を出て行った。

「天の羽衣教団は元日の今日正午に、共同記者会見をするそうだ」
デスクの山崎がみんなに伝えた。
「弥次喜多コンビは、まだ当分帰れないだろうから、
恂子と美雪で行ってくれ」
カメラを忘れるなよ、と山崎が付け加えた。
恂子は取材バッグに七つ道具を詰め込み、美雪に出発の合図を送る。

「先輩、教団の記者会見って何でしょうね」
美雪が言った。
水道橋へ向かう車の中である。
「さぁ、何かしらね」
知っていて、まだ答えられないことを訊かれるのは、つらい。
恂子は他の人に見えないものを見たり、感じたりすることが、
必ずしも楽しいことではないと思っている。
阿井は言った。
大海を知るということは、大変な事なのだと、
少なくとも、すぐには沈まない船をもっていなければならないと、
そして恂子は今、小舟を作りかけているような気がした。

阿井のことに心が向かうと、身体全体にしびれに似た感覚が戻ってくる。
あの時二人がしっかり抱き合いながら彷徨った空間は、
まったく現実を超越していた。
恂子は、阿井について、ムーについて、教団についても、
多くのことを知った。
それはとても一日や二日では理解不可能な情報量であった。
あれだけのものを見、感じ、経験し、
あれだけの時間を過ごしたのに・・・再び蝶の壁画の前へ戻った時には、
未だ午前0時前であった。
恂子が阿井の姿を見つけて走り出してから、30分もたっていなかったのである。
「あなたの愛の力が時の壁を超えさせたのです」
別れ際、阿井は恂子の耳元でささやき、きつく抱きしめてくれた・・・。

「先輩つきましたよ」
美雪に言われて恂子は我に返る。
車が教団ビルの正面に横づけされた。

(戦い、5,6へ続く)

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NO 215

 戦い

中央太平洋における突発的な大陸塊の隆起は、
重力に逆らって速度を上げ、海面に顔をだした時には、
秒速5センチメートルにもおよんだ。
押しのけられた海水は沈降部分の島々を、
あっという間に飲み込んでしまった。
近距離にあるオーストラリア、ニュージーランド、
パプアニューギアなどでは、
ある程度の対策がなされていたとはいうものの、
直接上げ潮になる津波のスピードに、
大都市の避難が間に合わず、
次々と襲ってくる、波高20から30メートルの水の壁に、
なすすべもなく翻弄された。
津波はさらに南北アメリカ、カムチャッカから中国に、
そして南極へと同心円状に進んでいった。

しかし、どうしたわけか、7月の地震や津波の時と同様に、
その後勢いがそがれ、各地の被害は意外に小さいものとなった。
日本においても、小笠原諸島でかなりの被害がでたものの、
最終的に三陸海岸に押し寄せた津波は波高4メートルに留まり、
最も心配された東京では、ゼロメートル地帯から
下町の一般民家にかけて、かなりの床上浸水がでたが、
津波の発生した10分後には、もう避難命令を出し、
避難場所や必要物資、食料や医薬品にいたるまでの
対策をたてていた政府の対応の早さによって、
人的な被害を皆無であった。

そしてそんな東京が一望のもとに見渡せる
天の羽衣教団ビル60階では、
ヴァイオレットクラスの4人が集まっていた。
「”破の舞”、第一段階終了。羽衣作動停止。領土復活70万平方キロ」
コンピュータの声とともに、眼前の霧の中に一際明るく、
中央太平洋の隆起した陸塊群が映し出される。

(羽衣の威力はすさまじい・・・)
誰かの印象が漂う。
(ところで、オーストラリア近辺はひどかったわねェ)
(ええ、しかし現在我々が持っている科学力では、これが精一杯です。
中和波のタイミングも難しく、とても全体を救うことは出来ませんでした)
(まあ、しかたあるまい。それで大陸全体の復活はいつ頃になるのだろう)
(それは、いつの日か我々の子孫がやってくれるだろう)
上部61階から”白のお方”の思念が降ってくる。
同時に霧の中の風景が一変する。

視点が遠ざかり、太平洋全体が見渡せるようになってから、
白く見えていた浅海全体が隆起しはじめる。
ゴツゴツとした岩だらけの陸塊が徐々に緑をおび、
やがて美しい大陸に変化していく。
(NO2、君のムーをみせてくれ)
(はい)
阿井が答えた。
緑の大陸に、丘が川が内海が生まれ、
神殿を囲んで大きな街並みができあがっていく。
満足そうにみているであろう”白のお方”は、
予定どうり思念を送った。
(”破の舞”第2段階開始)

(戦い3~4へ続く)

 

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NO 214

復活

33

”時の部屋”
阿井真舜が創造した空間である。
そこは、はぼ1万年の過去から現在に至る、
あらゆる時空間に通じていた。
未だ彼以外誰一人として足を踏み入れたことのない、
いや、踏み入れることの出来なかった場所・・・。
しかし、恂子はやって来た。

「愛の力だ」
阿井は片隅の寝台に近づきながら独りごちた。
そこには、時の壁を超えた衝撃に失神した恂子が横たわっていた。
やわらかく目をつぶっている白い顔は、安らかで気品に満ち、
その両側からシーツに落ちている黒髪とのあいだに、
ある種、情感の対立が感じられた。
見下ろす阿井の瞳に風波がたった。
彼はゆっくりとかがみ、
わずかに白い歯がみえる恂子の唇に、
静かに自分のそれを重ねていく。
恂子は阿井の新鮮な生の息吹を受けて目を開いた。

(阿井さん・・・)
胸の中で、阿井の息吹が発火した。
それは、みるみる燃え広がり、
深紅の炎となって全身を駆け巡ると、唇の接点から逆流していく。
阿井は彼女の体内からあふれ出る、灼熱の流れを感じていた。
あとからあとから、つきることを知らない愛の炎であった。
それは彼の体内を隅々まで満たし、さらに激しく押し寄せて来る。
(・・・・・)
阿井は声にならない叫びを発した。

突然部屋がゆがむ。
室内にあるものが次々と消滅していく。
机が椅子が書棚が寝台が、
そして彼らの身につけている衣服までが・・・。
今、阿井真舜は、自らの手で、
自らが創造した空間を崩壊させたのである。

(・・・・・)
恂子も、心の中で叫んでいた。
彼ら二人以外のすべてのものが消滅していく中で、
恂子と阿井は宙に浮いていた。
全裸でしっかりと抱き合い、ゆっくりと水平に回転していた。
二人の愛は二人だけの空間を創造し、満たしていた。
感覚器官が独立性を失い、目も耳も鼻も、舌も
すべてが二人の接点に集中していった。
・・・・・・・

34

虚空に蝶が舞い始める。
赤、青、黄色、何千、何万、何億、何兆。
色とりどりの蝶が、二人の周りに氾濫していた。
恂子はその時、
自分の中心から再び逆流して、刻々と自分を満たしつつある、
愛の潮に翻弄されながら、
夢のように展開する絵巻物に見とれていた。

 さんさんと降り注ぐ太陽。
 美しく広い内海、白い六角の石柱、壮麗な神殿、
 網の目のような水路、きらめく人工の滝・・・。
 そして河畔に佇む男。

眩暈をを感じる中で、すべてが眼前を通過していく。
恂子は、それがムーの首都、水の都ヒラニプラであり、
阿井真舜が時の旅人であることを肌で悟っていた。

二人の周りを乱れ飛ぶ蝶が、徐々に速度をましてきた。
恂子は自分を余すところなく満たし尽くしたものが、
一気に飛翔する時の予感に緊張する。
刹那、
恂子の体内からあふれ出した愛の潮は、
唇の接点から、津波となって阿井の体内に流れ込んだ。
一瞬遅れて彼の内奥からも、灼熱のマグマが噴出する。
二つの流れは合体して彼らを繋ぎ、
二人のあいだを高速で回転した。
宙に浮いた身体も回転する。
億万の蝶も回転する。
三重の螺旋は、今やすべての色彩を脱して、
真っ白な閃光を放ちながら、
10000年におよぶ時空間に飛散した。

35

同じ頃、曲立彦は六星グループの新型観測機のなかから、
きらめく中央太平洋の海水が、大きく盛り上がるのを見ていた。
それはかつて彼がこの洋上で見た幻のように、
どんな力にも屈しない強い意志を持って、
四方八方に海水を押し分け、ちぎり飛ばし、
しぶきを上げて一気にはねあがった。

「長径290キロ、高さ最高670メートル、
面積約6万平方キロの大陸塊です」
機内の電子器機を操作していた観測員が大声をあげた。
だが曲はその声をまったく聞いてはいなかった。
眼下に飛び出した大陸塊だけではない。
大小数え切れないほどの陸塊が、次々と浮上しはじめたのだ。
その度に海水は盛り上がり、泡立ち、
沸騰して白い牙をむき出しながら、
手当たり次第に近くの陸塊群に襲いかかり、
跳ね返り、先を争って十方に突進していった。

(こんなことがあるものだろうか。
いや、あっていいものだろうか。
すべてが自然に逆らっているではないか)
”しんかい6500”の母船から見た真っ赤な夕陽を思い出す。
(自然は自然のままであるべきだと、訴えかけていたではないか)
曲は自分の内奥から、あの夕陽よりもさらに赤く、
激しい怒りがこみ上げてくるのを感じ、
「先生」と呼びかけてくた四倉助手の声を聞いたような気がした。

そんな彼をよそに、機内では即時に通信衛星による専用波が、
六星グループのスーパーコンピュータと連動され、
観測員が次々とデータを送り込んでいる。
結果が来る。
眼下に広がる一面の陸塊群は、
日付変更線をはさんで、
東西約6000キロ、南北約4500キロにおよぶ範囲に隆起し、
最大のものは、フィージー諸島を飲み込んで浮上した、
面積30万平方キロの大陸塊であった。

(「復活終わり、「戦い」1~2へ続く)

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NO 213

復活

31

岡田の電話で駆けつけてみると、
水道橋付近はパニック状態となっていた。
かなりの数のビルが倒壊し、
ひび割れて途中から折れ曲がっているものもある。
E電が脱線横転し、おびただしい車が、
まるで箒で掃かれたように、道路脇に寄せられていた。

上空では、東京ドームの屋根が
大型のアドバルーンか飛行船さながらに、
ちらつく雪のなかに舞い、
散乱したコンクリートや、ガラスの破片のあいだには、
目を覆う死体がころがっていた。

あちこちで燃えている火や煙の隙間からは、
かん高く叫びあう声が聞こえ、
救急隊が負傷者の応急手当をしたり、
死者を運び出したりして動き廻っている。
雪と周囲の混乱のため、救急車が、思うに任せず、
自衛隊のヘリコプターの出動が要請された
下界の騒ぎを睥睨してそそり立つ
天の羽衣教団ビルの中程の高さに、いくつかの機影が見える。

カメラマンの良ちゃんがすぐに行動を開始した。
弥次喜多コンビは被害情報のチェックに、
恂子と美雪は、目撃者を捜してインタビューに駆け回る。
目撃者によると、ズーンという低い音とともに
教団ビルが数秒間身震いするように振動しただけだという。
しかし、
その直後突然周りのビルが崩れ、E電が脱線したのである。

地震予知連絡会の委員に意見を求めたところ、
まれには、
直下型の地震で、局地的に強い揺れが発生すすることもあるが、
今回のように、数秒で停止することはなく、
おそらくこれは、きわめて大きな低周波の塊が
吹き抜けたのではないかという見解を示した。

午後9時、都知事を本部長とする、
災害対策本部の共同記者会見に臨んだ恂子たちは、
発表内容にしばし茫然とした。
現在確認されただけでも、
死者358人、重軽傷者4000人におよぶという。

太平洋側の、他の三つの教団ビル付近においても、
同様なことが起こったという情報についての質問に、
当局からの回答があった。
その情報は事実であり、
直ちに教団ビルの立ち入り捜査が行われたが、
9階までの人間は、まったく要領を得ず、
令状を持った捜査官が、18階まで上がったが、
目に触れた人間は一人もいなかった。
しかも18階から19階へ上る手段は、
階段やエレベーターはおろか、
通気口に至るまで、何一つ発見出来なかったというのである。

今の恂子には、最初の財団訪問の時に大沢が話していた、
教団の戒律のことが分かるような気がした。
(きっと、何かの超自然的能力がないと、
上へは、行けないのに違いないわ)

32

午前0時すぎ、恂子は社に戻って原稿をまとめ終え、
一人歌舞伎町へ向かっていた。
今はもう、店ゝのイルミネーションも復旧し、
繁華街にはクリスマスソングが流れている。
つい目と鼻の先で大事故があったことなど、
ほとんど感じさせない人の波である。

(アマランサスで逢いたい)
光の雪が降る中で、阿井は確かにそう言った。
(ゆるしてくれたのね・・・)
恂子は降りしきる現実の雪の中を、
ペンダントに手を触れながら、真っ直ぐ前を見て歩いていた。
どういうわけか周囲の人たちが、彼女に道を譲っている。
やがて彼女は、確信に満ちた足取りで右へ曲がり、
アマランサスへの階段を下りていった。

太陽のレリーフのついた扉が開く。
中は無人であった。
恂子は、正面奥の壁に近づいていく。
壁は待っていたように左右に分かれる。
阿井が立っていた。
恂子は、両足を揃えて立ち止まり、大きく目を見開くと、
今度は、彼に向かって走り寄った。
だが、ほんの4,5メートルの距離なのに届かない。
阿井のところにたどり着かないのだ。
それでも走った。
蝶の壁面が阿井の後方に迫ってくる。
さらに走った。
まだ届かない。
前方に見えていた蝶の壁画が左右にもある。
そして、天井にも床面にも一面に蝶が飛んでいる。
恂子は懸命に走った。
両目から涙があふれる。

ふいに、床面が消失した。
恂子は回転しながら、
蝶の舞う空間をどこまでも落下していった。

(復活33~34へ続く)

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NO 212

復活

28

11月のある深夜。
黒々と屹立いている教団ビルの頂上から突然火花が散った。
たまたま目撃した者がいたとすれば、
東京中何処にいても分かったであろうほどの、
強烈なスパークであった。
近くには異常はなかったが、
伊豆の別荘地で、窓ガラスが割れる騒ぎがあった。
しかし、それはほんの一瞬のことであり、
ましてや、ロサンゼルス、シドニー、サンチャゴにおいても、
同様のスパークがあったなどとは、
その時点で誰一人知るよしもなかった。

一ヶ月が過ぎた。
その間中央太平洋の隆起は、
最上端が海面下500メートルのところで停止していた。
いまや、衛星写真によるまでもなく、
北西に傾いて飛翔しようとしている、蝶の姿がはっきりと現れ、
不気味な静寂を保っていた。

そしてここ東京。
新宿には雪が降っていた。
かってなかったような大雪である。
ジングルベルが流れるなか、
妙にぼやけたイルミネーションが、白い街に沈んでいた。
(きれいだわ・・・)
槙原恂子は、月刊GOO編集部の窓から外を眺めている。
彼女ばかりではない。
席を外している岡田を除く全員が窓に寄ってきていた。
恂子は大好きな夢道人の詩を思い浮かべる。

 雪が降る、雪が降る
 音もなく降り積もる
 人の世の喜びも悲しみも
 白くつつみ眠らせる
 ・・・・・・・

(雪がすべてを浄化してくれている・・・)
恂子は、世界中で起こっている未曾有の混乱でさえ、
やがて自然が解決してくれるような気がした。
手がペンダントにいき、目をつぶる。
光の雪が降っている。
恂子は心を込めて呼びかける。
雪が生まれている原点が接近し、光が八方に散る。
そこに阿井の姿があった。
(・・・!)
恂子の唇から小さな吐息が漏れた。

編集長の机で、けたたましいベルの音がした。
皆が呪縛を解かれたように動き出す。
受話器を取ったデスクの山崎の耳に、岡田の怒鳴り声が響いた。
「水道橋へ行け!」

29

「”破の舞”進行中、主要部分海面まで500メートル。現在停止中」
紫色の霧の中にコンピュータの声がうつろにこだまする。
(どんな時でも無感動な声ですね)
NO4のすこしざらついた波動が伝わる。
(イライラしても仕方があるまい)
(”羽衣”はまだですか)
時の旅人、NO2、阿井真舜が訊いた。
(4大支部の”白のお方”が探査中です)
(だいぶ人心を惑わしているようじゃないの)
NO3の皮肉な波動が割り込む。
(まあ、そういうな。彼らでさえ、
そうしなければならないほど、困難なことなのだから)

 11月に教団ビルで起こった激しいスパークは、
 この上に住む”白のお方”に原因があるらしい。
 そう、彼が通常の探査波に
 自らの霊波を融合させた瞬間に起こったスパークである。
 そしてその後一ヶ月余、
 太平洋岸の四つのビルの頂上から、放射された融合探査波が
 一点に集中され、
 はるか太平洋の海底、地殻の内部を走査していたのである。
 ”羽衣”を見つけるために・・・・・。

(たしか教団に伝わっている石版の文字が、
一部解読されたところによると、
”羽衣”はムーが沈んだ刻、同時に失われたということでしたね)
(そうだ、それは未だ太平洋の奥底に眠っているはずだ)

 母なるムーの甦るとき
 六つの青き息吹に誘われ
 再び闇より解き放たれん
 そは羽衣
 虚空に舞う

NO1が一部を暗唱した。
それは、彼らの未来を予言しているものとされ、
教典として、敬い親しんできたものであった。
そして今その時が迫っている。
羽衣さえ見つかれば・・・。 

静かに刻が移っていく。

30

「オゥ!」
4人が同時に快哉の声を上げた。
「”羽衣”発見。現在作動位置へ移動中」
コンピュータが無感動に告げる。
中央太平洋、海面下650キロ、20万気圧。
それは、6個の銀白色をした球の集合体であった。
四方から目に見えない力で捉えられ、
徐々にスピードをあげながら、上昇していく。
アセノスフェア、リノスフェア、地殻・・・
やがてその集合体は、
たくさんの空洞をもつ隆起陸塊の中央部に位置して、
いったん停止すると、
6個の球体が解き放され、それずれが水平に分散した。

「”羽衣”予定位置に移動完了」
コンピュータの声に重なるように”白のお方”の思念が伝わる。
(”羽衣”即時作動!)
ビル全体が極超低音のうなりに振動する。
次の瞬間、全東京のイルミネーションが光を失った。
はるか彼方、中央太平洋の隆起陸海の内部では、
6個の白銀球が、12000年の眠りから目覚め、
周囲に青いマイナスの光を放ち始めた。

その時、阿井の超感覚に、
槙原恂子の心からの呼びかけが響いていた。
(アマランサスで逢いたい)
阿井は、決心したように自らの想いを送信した。

復活31~32へ続く。

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NO 211

復活

24

扉を押して入ってきた岡田を見て、由美は胸が熱くなってくる。
彼が現れる数分前から、由美は彼の波動をとらえていたが、
その数分間が、何とも言えず待ち遠しい。
すでに火にかけておいたサイフォンに、特製のコーヒーを入れ、
カウンターの前を通っていく岡田に、はずんだ声をかける。
「いらっしゃいませ」
ここ半月以上、岡田は由美の部屋を訪れていなかった。
教団の”破の舞”について詳しく調べる必要があるのだと言っていた。
「コーヒーでしょうか」
コーヒーなのは分かっている。
他の客の手前訊いている。

岡田は頷きながら由美の頭の中に、
扉のそばのボックスにいる客について尋ねている。
その客は、これまで2,3度店に来ている。
週刊誌を読みながら、ひっそりとコーヒーを飲んで帰っていく客である。
その客に注意するようにと、岡田から由美に無言の指示があった。

前に逢った時、岡田は忙しくて寝る暇もないと言っていた。
それは彼の場合、文字道理眠っていないことだった。
由美の部屋で一夜を過ごした時でさえ、
添い寝してくれただけだったような気がする。
(いったいいつ何処で眠っているのかしら・・・)
由美は、岡田によって覚醒されてから、5年近くにになるのに、
彼の動向については、ほとんど分からない。
それをいっこうに不満に思わない自分も、不思議であった。

岡田専用の豆の香りが、あたりに広がる。
温めたカップに、心を込めたコーヒーを注ぐ由美は、
それだけで、幸せで、満たされていた。

25

「ママ、何を考えてんだ」
カウンターにいた二人の男のうち一人が上目遣いに由美を見た。
「別に何も・・・」
「いい人のことだとさ」
別の一人が言った。
「ホウ、好きな人がいるのか」
「ええ、たくさんいるわよ」
由美は微笑みながら
コーヒーとミルクを載せたトレイを岡田の席へ運んでいく。
「ママはいつだって冷たいんだから・・・帰ろうか」
カウンターの一人が、もう一人を促して立ち上がった。
扉側のボックスの客も後を追うように出て行く。
客が岡田だけになって、”モカ”には、音楽と香りの時間が流れる。

26

岡田がカウンターに移ってきた。
「結論がでたよ」
「えっ、なんですの」
「ムーの復活だ」
「ムーの・・・」
「天の羽衣教団は、ムーの血を受け継いだ、超能力者の集団だ。
彼らは同じ血を受け継ぐ者を集め、
12000年前に太平洋に没した国土を、復活させようとしているのだ」

岡田は胸のポケットに手を入れて由美を見る。
素早く察した由美は引き出しから紫色の小箱を差し出して渡し、
マッチを擦る。
しばらくの沈黙の後、岡田が話題を変えた。
「恂子が覚醒した。天の羽衣教団の導師、阿井真舜がそうさせたのだ」
「どうして彼女が教団の・・・」
「いや、恂子はまだ自分を、ほんとうには知らない。問題は阿井だ。
何故GOOの血を引く我々サイドの者と知っていて、覚醒させたのだろう」
「なぜでしょうか・・・」
「彼女は彼にとっても必要な存在なのだろうか・・・
そんなことを超えて、真の意味で愛し合っているのかもしれないが・・・」
「きっと、そうですわ」
由美は我が意を得たりというように、
しかし、控えめな声で言った。
(愛はすべてを超えるのですわ。私がそうだから・・・)
一瞬二人の目が合った。

27

岡田は由美の大きく見開いた瞳の中に、
恂子と阿井の、愛の秘密をみたような気がした。
恂子に対して、大切にしなければいけないと思っていた理由も、
朧気に分かりかけていた。
(二人が愛し合うことが、人類にとって必要なのかも知れないな)
岡田の思いに紫煙が揺れる。

どうやら予言の刻で語られてことは当たっているようだ。
ムーの血を引く者として、今世界中を混乱させている教団の計画と、
それを回避しようとしているGOOの仲間たちとが、対立しているのだった。

「羽衣をみたことがあるか」
岡田がまた話題を変えた。
「羽衣・・・ですか」
「そうだ」
「三保の松原の伝説なら・・・でもお能には行ったことがありませんわ」
「教団は羽衣を探しているのだ」
それがこの半月で得た、岡田の第二の結論であった。

(復活28~30へ続く)

 

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NO210

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第2回東京タワー文化フェスティバル
拙作「時の哀歌」~チューバとマリンバのための~収録中。
今週いっぱい東京タワーテレビで、インターネット発信。

弘前市合唱連盟60周年記念演奏会
11月5日、無事成功裡に終えることができました。
お運びいただいた皆様、ご協力をいただいた皆様に
心から感謝し、お礼申し上げます。
今後また一歩ずつ進んでまいりますので、
ご指導のほど宜しくお願い申し上げます。

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縮小_60周年記事

 

復活

21

槙原恂子と、星野美雪は、
現地から送られてくる情報をまとめるのに忙しい。
他の連中も、編集長の岡田と二人のデスク以外は、全員出払っていた。
「先輩、これでどうでしょうか」
美雪がグラビアのレイアウト案を見せた。
中心に海洋観測衛星”モモ1号”による現地写真が載っている。
青い海原に、はっきりと浅い白い部分が浮き出し、
左右に翅を広げた蝶が、
北西へ向かって飛翔しようとしている姿を彷彿させる。
「すばらしいわ、OKよ。デスクにまわして・・・」

言いながら恂子は、アマランサスの蝶の壁画を思い出していた。
最初にあの壁画を目にした時から、
彼女は蝶の群れに暗示的な強い印象を受けて、
忘れられないものになっていた。
手がペンダントに触れる。
目をつぶると幸福の光が身体を包んでいく。
阿井真舜の姿は現れない。
恂子は、目を閉じたまま、しばらくじっとしている。
心が鎮まってきて、
あの壁画が、
やはり、この隆起部分を象徴的に表現しているのだと分かってきた。
空からは、さんさんと太陽の光が降り注いでいるのだ。
(でもあの黒い扉は何かしら)

22

右手のドアが勢いよく開いて、
大山と小山のヤジキタコンビが飛び込んで来た。
彼らはたった今現地から戻ってきたところである。
「驚きました。予想以上です。
特にフィージー諸島の隆起は、とても信じられません。
地表面は3メートル以上持ち上がり、
近海の浅い部分は海上に姿を現しているんです」
「隆起の速度は」
小山の報告に、デスクの山崎が質問する。
「現地で六星海洋気象研究所の曲部長にインタビューできました。
彼によると、隆起の開始は7月1日の地震の時と推定され、
その速度は3000メートルの海底で、時速40センチ、
1000メートルで、その1/10、
300メートルの浅海では、さらにその1/10の、
0.4センチとなっているそうです」
「で、原因は?」
「トンガ海溝で急速にプレートが沈み込んでいる他は、
はっきりしたことは分からないのですが、
四方から海底が押し上げられて、その分周囲が沈降しているそうです」
「”しんかい6500”で潜ったんだろう」
「ええ、決死の調査だったそうです。
急激な隆起のため、問題水域の海底に長い亀裂が走り、
それに向かって
逆方向から崩れ現象が起こっているのが確認されました。
浮上しつつある部分の周囲がどんどん沈み込み、
それを埋めるように海底が移動しているのです」
「うーむ、で、住民の反応は」
「問題水域を囲む中央、東、南の各太平洋海盆は、特に沈降が激しく、
20メートル以上の水位上昇となり、住民は避難を始めています。
しかしフィージーをはじめ、一般的にはわりと冷静で、
彼らの話によれば、”神の怒り”だとのことでした」
小山の報告が続いている。

23

大山がどうも腹が減ってこまるなどといいながら、
恂子たちのほうへやって来た。
「すごかったぜ、あれこそが自然の芸術ってェやつだな。
あたしゃチャーター機から眺めて感動したよ」
一人で騒いでいる。
「太平洋に大きな蝶が舞いだしたって感じだな、ありゃー」

そうだ、まったく自然の創造した芸術としか言いようがなかった。
恂子たちも、たった今、
”モモ1号”からの映像に目をみはったところである。
現地の上空から見て回った大山たちは、
さぞかし驚いたことであろう。
「えつ、本当、すごいわねー」
美雪が相づちを打った。
(ウフフ・・・)
恂子は心の中で微笑む。
自席で、黙って山崎たちの話を聞いていた岡田が、ゆらりと立ち上がった。

(復活24,25,26へ続く)
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NO 209

縮小_60周年記念
60周年を記念し、各団体の枠を超えて
女声、男声、混声のステージを組みました。
下記のプログラムです。
どうぞお運びください。
60周年プログラム

復活

19

10月にはいり、あちこちで紅葉の声がきかれるようになってきた。
遠く離れた太平洋で、何が起ころうと、
いや、たとえ隣で殺人が行われたとしても
無関心を決め込む人たちが何と多いことだろう。
ここ東京でも、その無関心故の事件が毎日のように起こっていた。

「人口が増えすぎたのよ」
NO3が言う。

「その中で、ほんとうに生き甲斐を持っている者は、
どれくらいいるのかしら」
「それだけならいいのですが、
生きることが他にとって非常に悪である連中がたくさんいるのです」
NO4が真面目な顔で付け加える。
「ある意味では死にたがっている人も多いんじゃないの」
「教団の中だけではなく、一般の人たちでも、
そんな人には安楽死を与えてやるべきだと思います」
「一石二鳥ってわけね」
「そうです。食料やエネルギーのことを考えると
今でも世界の人口は多いくらいです」
「方法は別としても
世界平和のためとあらば、実行することになるだろうな」
NO1が締めくくり、コンピュータに破の舞の進行状態をたずねる。

20

「”破の舞”進行中。
メラネシア、ポリネシア、ミクロネシアとも現在予定の3/5を終了。
なお浮上中」

(12月になるな)
(そうです。いよいよ我々の国土の復活です)
「”破の舞”進行中。メラネシア第23ガスチェンバー破損」
(フム、そんなこともあるだろう)

教団の”破の舞”は中央太平洋の海底をハイスピードで押し上げている。
それは海底にある岩盤の空洞に、
火山性のガスを送り込むことからはじまった。
岩盤は膨張し上部を押し上げていく。
それと同時に基部は四方から押され、さらにスピードをあげる。

「”破の舞”進行中。トンガ海峡プレートの沈み込み順調」

中央太平洋の重力減少により、
ゆっくりと潜り込んでいたトンガ海溝のプレートが、
次第に速度を増し、フィージー諸島を中心に急激な隆起が起こっているのだ。
要所要所に教団が開発した強化オリハルコンが注入され、
それぞれのガスチェンバーの外壁に、
通常の何十倍もの粘着力と堅固さを与えていた。
問題の海域は、3000メートルの海底がすでに1800メートルまで隆起し、
海上部分においても、月に1メートルの速さで地盤が上昇を続けている。
現地には毎日のように報道陣や科学者グループが往き来し、
どんなに無関心を決め込んでいる人たちも、
ただ漠然と眺めているわけにはいかなくなっていた。

(復活21~23へ続く)
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